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「えええっ。何その3つ~。ありえない~。」
診察の話を詳しくすると、メルバさんは眉をしかめて叫んだ。
その3人のエルフのしたことは、医者としてしてはいけないことだったみたい。
「困るな~。そういうことは報告してもらわないと~。誰だろう~?」
メルバさんは文句をいいながら手土産のお菓子をもぐもぐ食べた。
手土産はシフォンケーキだった。今人気のお店なんだそうだ。
店主はエルフで、実家に伝わるレシピを改良・研究し、究極のシフォンケーキを追及したのだとか。
元レシピはもちろんあー兄ちゃんだ。
もとのケーキに味を知ってるけど、こっちの方が比べものにならないくらい美味しい。
やっぱり素人とプロの違いは大きいなあ。
私の水菓子もそのうち改良されていくんだろう。
美味しいスイーツは大歓迎だ。
さて、話を戻すけど、「3つでやってる」っていうのがヒントになったらしくて、オルファさんを診療したエルフの正体はすぐにわかった。
ビリオル、ヘタエリ、ヤブリーデの3つ子で、何をするにも3つ一緒なのだそうだ。
名前からしてヤブ医者っぽく聞こえるのもいただけないけど、腕もまだまだ未熟なのだとか。
本当なら里からは出さないレベルのヒヨっ子なのだけど、それぞれ特化して得意な分野があるそうだ。
ビリオルは薬草、ヘタエリは魔素の調整、ヤブリーデは薬の調合の腕が他より抜きんでて上達していて、3つ一緒ならという条件付きで里から修行に出したのだそうだ。
「西の大きな治療所に預けたんだけどね~。勝手にいなくなったらしくて、問題になってたんだよ~。」
「そういや、騒ぎになっとりましたなあ。」
「ルリエルが出すんじゃなかったと頭を抱えておった。」
「あ。ルリエルというのは、3つ子の母親じゃ。3つ子を外に出すのを最後まで反対しとった。…勝手に中央で治療所を始めるとはの。」
メルバさんも長老さん達も深々とため息をつく。
どうやらエルフの問題児のようだ。
まあ、3つ子に関しては報告もしたし、この分だと捜索されて連れ戻されるだろう。
これ以上は私の関わる部分じゃあない。
それより、黄の一族だ。
勝手なことをした若手のせいで、一族全体の評判が落ちてしまった。
これは早急に手を打たないといけないだろう。
「う~ん。黄の一族には迷惑かけちゃったね~。ハルカちゃん、お詫びに行きたいんだけど、ついて来てくれる~?」
「はい。あ。例の生き物が何だったのかお知らせするお約束なんです。その時はいかがですか?」
「うんうん~。その時一緒に行かせてもらうよ~。説明もするし~。ありがとう~。」
「ありがたい。」
「よろしくお願いするぞい。」
「ハルカちゃんがおってくれて助かったのう。」
どうせ、行かなきゃいけなかったんだし、これくらいの橋渡しはさせてもらおう。
ここまで関わって、知らんぷりは出来ないしね。




