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「あの。…生き物とは何のことでしょう?」
クルビスさんとオルファさんの名乗りが終わると、ラズベリーさんがおずおずと声をかけてくる。
クルビスさんをちらちら見てる。怯えてますよ~。クルビスさん。
それを感じたのか、クルビスさんは魔素を抑えたまま横に数歩移動して入口から完全に離れる。
それを見て、少しホッとした様子でラズベリーさんとグレゴリーさんが中に入って来た。
話は聞こえていたんだろう。
まっすぐ私を見てきた。
「生き物だと思います。綿のようなふわふわしたもので、オルファさんにくっついていました。手の中に捕まえましたが、とても弱い魔素で今にも消えそうです。」
「姉上。その生き物はどうも私にしかくっつかないようなのです。私の病気と何か関係があるかもしれません。一度、深緑の森の一族の長さまに見て頂いた方が良いと思っています。」
「まあっ。それが原因なの?」
「いいえ。姉上。まだわかりません。ですが、ハルカ様がご自身の魔素をここまで抑えて捕まえて下さったのです。どのような生き物なのか、私に関係なくとも調べて頂きたく思います。叔父上、いかがでしょうか?」
「それがよろしいでしょう。ハルカ様、お見事な抑えこみでございます。長のためにありがとうございます。どうか。深緑の森の一族の長に見て頂けるようお取次ぎ願います。我らでは長様に面会も叶わぬのです。」
オルファさんがそう言うと、それまで黙って見ていたグレゴリーさんが驚きの事実を言って頭を下げた。
面会もかなわないって…そんな話聞いたことないんだけど。
何か確執があるんだろうか。
それで黄の一族は長の一大事に薬を手に入れられなかった…とか?
だって、診に来たっていう深緑の森の一族の話を聞いた時におかしいと思ったんだよね。
一族の長といえば、かなり偉い立場のひとだ。
それなら、どうしてメルバさんに直接見てもらおうとしなかったんだろうって不思議だった。
メルバさんの博識はルシェモモの内外問わずとても有名なのだから。
でも、過去に何かあって頼めない事情があったとしたら?
そもそもそれが原因で薬の知識が伝わらなかったとしたら?
(うわあ。他所様の厄介ごとに首突っ込んじゃった。クルビスさんごめんなさい。でも、病気の原因かもしれないものをほっとけないし…。)
自分の関わろうとしている事の深刻さに気づいて顔が引きつりそうになる。
でも、目があったクルビスさんが「大丈夫だ」と言ってる気がして、腹をくくることが出来た。
うん。声が聞こえた時点でもう関わってたんだもんね。
クルビスさんも味方してくれてるし、こうなったら、やれることはやろう。
第一、子供や若い人ばかりかかる病気なんて無い方がいい。
今流行ってるんなら、守備隊にいる子供たちだってかかるかもしれないんだ。放ってはおけない。
「声が聞こえたのも、何かのご縁です。上手く結果が出るかわかりませんが、私にやれることはやってみましょう。」
頭を下げたままのグレゴリーさんに今の私に言える精一杯のことを返した。




