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グレゴリーさんに案内された先はとても豪華な部屋だった。
広さは20畳くらいで、アルフレッドさんやアーネストさんのお家ほどじゃない。
でも、室内に配置された家具がとても手が込んでいるのは見てわかった。
まず、壁に視線が行く。
背の高い細身の剣のような草が織り込まれた織物がかけられていて、部屋の中なのにまるで外のように錯覚する。
織物に驚くと、その傍にある木製の家具に目が引き寄せられる。
側面に百合のレリーフが掘り込まれたスリムタイプのチェストだ。
見たことのある意匠だ。これはエルフの作った家具だ。
収納式の家具が一般的なこの街で、わざわざ家具を配置するのは裕福なものの証だ。
日本人の目から見たら上品で質素にも見えるけど、いくつもの木製の家具が配置されたこの部屋はルシェモモの基準ではとても豪華な部屋だった。
窓際には小さな装飾の施されたテーブルが置かれて、その上には美しい模様の描かれた花びんが乗っているし、中には色とりどりのハイビスカスのような花が活けられている。
そのまま真ん中に目を移すと、木製の土台に上品な布のクッションを張り付けたソファと、木製の大きなテーブルのセットが置かれている。
奥のソファの横にはグレゴリーさん、ソファの真ん中には黄の一族の女性が立っている。
綺麗なからし色の体色で、光沢のある肌が光をはじいてとても綺麗だ。
丸くて小さな頭に涼やかな青い瞳が印象的で、瞳の色に合わせた青いワンピースを着ていた。
大まかになら若いかどうかわかるようになったから、彼女が若いというのはわかる。
グレゴリーさんのお嬢さんかな?
「初めまして。スタグノ族黄の一族の長が姉、ラズベリーと申します。本日は長である弟が臥せっておりまして、変わって私がご挨拶させて頂きます。この度はご婚約おめでとうございます。お二方の先が光あふれるものでありますように願っております。」
丁寧な挨拶の口上と共に、歓迎と好意的な魔素がこちらに流れ込んでくる。
…綺麗な瞳。ラズベリーさんは好きになれそう。
よかった。このひとの弟さんなら、ちょっと期待が持てる。
グレゴリーさんタイプのひとばかりだと、さすがに笑顔に限界が来てただろうし。
(……い。)
え?何か聞こえた?
でも、グレゴリーさんもラズベリーさんもにこやかにこちらの名乗りを待ってくれている。
誰かに話しかけられた感じはない。気のせいだったのかな?
緊張してるからかも。まだ挨拶の途中だし、しっかりしないと。




