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18(クルビス視点)

リクエストで書きました。

今回は2200字程。

「でも、今は婚約者ですよ?」



「ホントは婚約期間中ほどダメなんだ。相手を大事にしてるのを周囲に認めてもらわないといけないから。付き合ってる時の方が個々の責任な分、まだ自由だな。」



 俺の説明にハルカが不思議そうな顔をする。

 リードに聞いた話だと、ヒト族は付き合うことが婚姻と同意義のようだからな。理解しがたいだろう。



 それに女性を家や一族の付属物と考えるものらしいから、婚約したら相手のものと思っているのかもしれない。

 だが、この世界ではそうではない。



 子供が少ない理由に魔素の相性があるが、他に子を生める母体が少なかった時代があったからだと聞いている。

 そのため、母体となる女性の扱いは慎重を極めるものだった。



 伴侶にするためには親族、一族にどんな困難からも守ることを約束させられ、守れなければ奪い返されることが認められていたくらいだ。



 今では女性も男性も同数くらいいるが、その時代の名残として正式な伴侶とする場合、大事にすることを徹底して周囲に認知させないといけない。

 そのうちの一つに「伴侶の尻尾にみだりに触れない」というものがある。



 尻尾を持つ種族にとって、尻尾は魔素の調節に欠かせないものでもあり、根本は性感帯でもある。

 そのため、尻尾に触れることが出来るのは伴侶だけと決められている。



 これは尻尾の無い種族にも適用され、婚約期間中は伴侶となる相手と距離を取って、どんな時でも相手を最優先に考えていると態度で示す。

 だが、一番盛り上がってる期間に触れるななど、拷問もいいところだ。



 昔はこの考え方にも一理あると賛同していた。

 シードが婚約した時だって「俺のもんだと見せつけてやればいい。」などと気楽に言っていたものだが、今ではとんでもない話だ。



 トカゲの一族の披露目の時も、ハルカを1つきりにさせないためと理由をつけて、尻尾を足先に絡ませてたら、ルドに呆れられた。

 ハルカの頬に触れながらしみじみ愛しいと思う。



 こんなに誰かに傍にいて欲しいと思ったことなどなかった。

 自分から触りたい、抱きしめたいと思ったことも。



「大事にしたいんだ。それを皆に知らしめたい。ハルカが俺を想って世界に宣誓したみたいに、俺もハルカを想っているんだと。」



 俺の正直な気持ちを魔素に乗せて言葉で伝える。

 ウソ偽りないと潔白を示す時に使う方法だが、口説く時にも使われる。



 自分の気持ちにウソ偽りがないことを示すためだ。

 俺の場合はハルカに俺の魔素に慣れてもらうためというのもある。



 ハルカと婚約したあの日、深緑の森の一族の長に忠告された。

「ハルカは俺の魔素を受けきれないかもしれない。」と。



「まあ、さっきのハルカちゃんの魔素の感じだと、つぶされることはないと思うんだけどね~。

 でも、ハルカちゃんいままで魔素とは無縁の生活してきたでしょ~?



 しかも、生まれてからまだ20数年しかたってないって言うし~。

 だからね~?婚約しちゃったから直接は難しいかもしれないけど、積極的にクルビス君の魔素に慣れさせるようにしてあげてね~。」



 長が示したのは、ハルカが自分以外の魔素を受け止めきれずに拒絶してしまう可能性だった。

 普通、婚約に至るまでにそれなりの期間一緒にいるので、影響はかなり抑えられるものだ。



 だが、俺とハルカの場合、出会って数日で婚約してしまい、その上「1年も我慢なんて無理でしょ~?」と長に式までが短期間になるだろうことも予測され、見事その通りとなってしまった。



 少しでもハルカに俺の魔素に馴染んでもらわなければ、ハルカは触れ合った俺の魔素を無意識に攻撃して、最悪、自分で自分を傷つけてしまうだろう。



 だから、暇を見てはハルカに俺の魔素に慣れさせるのが日課となっている。

 別に魔素に慣れさせるだけなら手でも握ればいいのだが、それをしないのは単なる俺の嗜好だ。



 ハルカは耳が弱いらしく、「その声でささやかないで下さいっっ。」と良く真っ赤な顔で涙目になっている。

 それが非常に可愛いので、魔素に慣れさせるのはこの方法を使っている。



 それをハルカの担当治療師のリードに言ったら「…それは彼女に言わない方がいいですよ。」と苦笑された。

 まあ、言われなくても男のこういうバカな部分をわざわざさらすつもりはないが。



 ハルカに「我がまま」に付き合ってもらいつつ、頬においていた手を唇に動かす。

 柔らかい肉厚の唇だ。牙もないし、中は柔らかいんだろうな。



 俺の考えてることがわかったのか、逃げようと身体を動かすハルカ。

 だが、膝に俺を乗せてる以上、身動ぎする程度しか動けない。



 唇から指を離さないまま追いかけていると、少し怒った感じの魔素が流れてきた。

 …いや、これは怒るというより拗ねてる感じが近いな。



 そんな赤い顔で潤ませた瞳で睨まれても可愛さが増すだけなんだが。

 もう少しこの感触を味わいたい。守備隊に帰ったら、こんなに長い時間2つきりなんてなれないからな。



 かぷ。



 暖かい感触が俺の指を包む。

 ハルカが俺の指をくわえたからだ。



 あまりのことに一瞬硬直する。

 柔らかく暖かいものが指をかすめて、それが舌だと判断した瞬間、魔素が一気に膨れ上がりそうになる。



 牙のない歯が指に当る…これ以上無理だ。

 魔素を無理やり抑え込み、俺は負けを認める。



「やられた…。」



 名残惜しく思いつつ、俺はハルカの口から指を引き抜いた。今日はここまでだな。

 その際軽く指を吸われて、理性がブチ切れそうになったのは彼女には絶対言えないことだ。


ちなみに、クルビスさんのヒト族の知識はエルフのいた世界でのものです。

中世くらいの文化レベルで、付き合う=結婚なくらい古い価値観の世界です。

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