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17(クルビス視点)

リクエストいただいたので書きました。

ちょっと長めの2000字。

 今日は飲み過ぎた。

 ハルカと共に部屋に戻ると、ドッと疲れが出る。



 アーネスト様主催の宴は大体飲み比べに発展するのだが、まさか一気飲みでヘビの一族と競争することになろうとは。

 今日はずっと祝杯を受けてたから、適当な所で負けてしまおうと思っていたのにどうしてこうなったのか。



 理由はわかっている。ハルカが見てたからだ。

 シードと飲み比べに当った時、「お前ってたまにバカだよな。」と笑われた。



 自分でもそう思う。

 食べることと飲むことに関して、ヘビの一族は底なしとも言われる。



 そんな一族の飲み比べに本気で挑むなんて、バカと言われても仕方ないことだ。

 だが、戻ってきたハルカの姿を見たら「負ける」という選択肢は頭から吹き飛んだ。



 伴侶の前で強さを見せようとするなんて、これではまるでドラゴンの一族だ。

 昔から、祖父に父と2代に渡って強いドラゴンの血が入っている俺は、トカゲの一族ではあるが限りなくドラゴンに近いと言われてきた。



 その証拠に俺の背中には小さな手の平ほどの羽がある。

 大きさも小さくて飛べもしないし、収納も出来ないので不便なことこの上ない代物だ。



 だが、ドラゴンの血が強く出過ぎた個体には良くあることで、使えない羽があること自体は気にしたことはない。

 むしろ、力の強さの象徴とも言われ、ルシェモモでは美点の一つとされている。



 だが、厄介な気質まで受け継がなくてもいいものを…。



 ドラゴンの一族は伴侶への執着が激しい。

 長命で強大な力を持つためか、見合った力を持つ伴侶を中々得られないからだ。



 それが表れる行動として、ドラゴンの一族の男性は伴侶に対して強さと頼りがいを全力でアピールすることで有名だ。

 自分は相手を守るだけの力を持っていると示し、常に周囲に伴侶を奪われないよう警戒する。



 ドラゴンの血の濃い俺は、そういうことがあるかもしれないとは聞いていた。

 だから、魔素の修練も精神の鍛練も他の個体以上にやってきたつもりだ。



 だが、実際に伴侶の前で限界まで頑張ってしまった自分を思い出すと、これまでの自分の培ってきた自制は大したことなかったのだと思い知らされた。

 今も考え込んでるハルカを見て、腕の中に抱えて閉じ込めたい気持ちがふつふつと湧き上がってきている。



 こんなこと、ハルカには言えないな。怖がられる。

 そんな気持ちを誤魔化すように話しかける。



「ハルカ?大丈夫か?」



「え。あ。はい。大丈夫です。今日のお披露目は驚くことばかりだったので、ちょっと思い出してたんです。初めて食べたものも多かったですし。」



 確かに今日の宴は珍しい料理が多かった。

 ルシェモモでは調理師たちの大会もあるくらいで、日々、新しい料理が創作されているが、どれも聞いたことの無いものだったな。



 シードに聞くと、ウジャータ様の調理師学校を出た調理師たちがここ数十年で台頭してきているんだとか。

 それを聞いて俺は納得した。ヘビの一族の多い西地区では料理店は繁盛し易いからな。



 調理師には優先的に店舗を貸す者もあるくらいだ。

 そんな訳で、今回はアーネスト様が気に入った無名の調理師も数多く屋台を出して、自分の店と料理を有力者たちにアピールしていた。



 地域の発展、これも族長の役目の一つなのだろうな。

 俺もトカゲの一族の次代として見習わなければ。



「そうか。俺も今日初めて食べたものが結構あって驚いたな。西の料理は結構食べてたつもりだったんだが…。ああ。それより、本当に大丈夫か?かなり食べ物を勧められていただろう?苦しくないか?」



 ハルカは多少の無理は隠すところがある。

 俺には気にせず頼ってくれていいのだと思って欲しい。



 だが、ハルカは笑って大丈夫だと言った。

 アニスの薬を飲んだのが効いたようだ。



 魔素も揺れてないし、本当に無理はしてないみたいだ。

 薬の効果に素直に感心して俺も調合してもらえば良かったと言うと、ハルカが心配そうに俺を覗き込む。



 その顔を見て、あることを思い付く。

 ハルカとリリィが言っていた「我がままを一つ聞いてあげる。」の内容だ。



 あれを聞いてシードの魔素が異常に高まった恐るべき誘惑だ。

 具体的に何をしてもらうか決めてなかったが、良いことを思い付いた。

 今なら聞いてもらえるだろう。



「ああ。さすがにあれだけ飲み食いしたらな。っそうだ。…だから、ハルカ。ちょっと足を貸してくれ。」



 俺はごろりとハルカの膝に頭を乗せて寝転がった。

 いきなりだからか、ハルカが驚いた顔で俺を見ている。



 何か言われる前に、我がままだと押し切ってしまおうか。

 そうしなくてもハルカは聞いてくれそうだが。



「聞いてくれるんだろう?我がまま。」



「ええ。…こんなのでいいんですか?」



 こんなの?

 婚約中にこんな大胆なことをすれば、叱責されても仕方ないんだが…ああ、ハルカは知らなかったか。



 さて、どんな風に説明しようか。

 説明した後で怒られないようにしないとな。



背中の羽については「日進月歩~」でキーファ副隊長を出した時に考えたエピソードです。

「日進月歩~」のアニスさん視点の話で、キーファ副隊長の背中に鱗がある描写がありますが、それと関連してます。


まあ、今のところ表に出ない設定ですが。

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