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 *******************



「ハルカ様。大丈夫ですか?」



「だ、大丈夫です。リリィさんこそ、たくさん勧められてましたけど、大丈夫ですか?」



「ええ。まあ。なんとか。アニスにお礼を言わないと。」



「あ。消化剤、調合したのアニスさんなんですか。」



「ええ。私がいつも大変だってシードに聞いたらしくて…。ホントに気のつく子だわ。」



 ただいま、会場の端っこでリリィさんと避難中。

 次から次に来る料理にさすがに顔がゆがみそうになって、慌ててトイレ休憩と称して逃げてきた。



 そしたら同じ場所にリリィさんがいて、ふたりで追加の消化剤を飲んで休憩している。

 おどろいたことに、アニスさんの調合した消化剤は3段階だった。



 1番目は最初の方で飲む。2番目はお腹が一杯になったら飲む。そして、3番目は戻しそうになる直前くらいに飲むらしい。

 延々と食べること前提に作られた超強力消化剤。すごいもの作ったね。アニスさん。



「何だか、お腹の圧迫感が減ったような…。」



「あら。私も…。」



 10分程休憩してると、お腹が苦しいのがマシになった。

 …早っ。効果早っ。消化剤ってこんなに早く効くもんだっけ?



 リリィさんも目を丸くしてるし、一般的な効能じゃなさそう。

 アニスさんホントすごいもの作ったなあ。



 これならもう少ししたら会場に戻れそうだ。

 …ん?誰か来る?足音が…て、マズいっ。



 こんな隅っこで避難してたのがバレたら恥ずかしいっ。

 リリィさんもそう思ったみたいで、二人でそろっと音をたてないように移動した。



「ふふふっ。いい気味だな。これでイグアナやカメレオンのやつらは手出しできまい。」



「ええ。お相手が黒の単色では、向こう様も相手を紹介することも出来ませんでしたしねえ。ルシェリードさま直々に見つけられた伴侶殿です。誰も文句をつけないでしょう。」



「ああ。北の辺境だ。誰にも見つけられないはずだ。ようやく見つかったな。」



「ええ。おめでたいことです。これで、クルビス様の暴走も防げる…。」



「しっ。滅多なことを言うな。あの方はルシェリード様のお血筋だぞっ。」



「ええ。ですが…。」



 そこで声は遠ざかって行った。

 何だったんだろう。カメレオンにイグアナって言ってた?



 たしか、どちらもシーリード族に入ったのが一番遅かった一族だ。

 そのせいで、何かと立場が弱いって聞いたけど…何かあったのかな。



「完全に行きましたね。これくらい離れれば大丈夫です。」



「そうですか。もう会場に戻りましょうか。」



「そうですね。ハルカ様。今のこと、後でクルビス隊長にお伝えください。他の方にはおっしゃいませんように。」



 リリィさんの忠告に頷いて、音をたてないように移動する。

 それにしても、さっきの話。あれがクルビスさんの暴走を心配する声かあ。



 クルビスさん、あんなのを子供の頃から聞いてたのかな。

 嫌われるのとは違うけど、腫物を扱うようっていうか、怖がってるっていうか…。



 力の強い個体には仕方ないものらしいけど、向けられていい気分はしない。

 決めた。今日はクルビスさんを甘やかそう。そうしよう。


 

 周りのひと達がああいう態度取るんなら、その分私が大事にする。

 それで丁度いい。

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