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次々と来る挨拶とおすすめの料理を何とかこなしていると、真紅のヘビの女性が来た。
手にはお皿に盛られた小さな緑色の木の実みたいなのを持っている。
「おめでとう。あたしはサリエ。魔技師さ。この地区で小さな工房をやってるんだ。」
「ありがとうございます。魔技師さんですか。何を作っていらっしゃるんですか?」
「失った手足の代わりさ。後は、じい様やばあ様たちの杖とかだねえ。」
ああ。義手に義足。
本物の手足のように動くって聞いたやつだ。
すごいなあ。当たり前みたいに言うところがまたカッコイイなあ。
作れるひとはすごく少ないって聞いた。腕のいい職人さんなんだな。
「すごいですねえ。本物みたいに動くって聞きました。」
「ふふっ。まだまださ。元の手足以上に使えるようにするのが夢だね。…ああ。話が変わるけど、ルシンが世話になったね。あの子はうちが近くて、よく遊びに来てたんだ。無事だったのはあんたのおかげだって聞いてる。」
ルシン君の知り合いかあ。まあ、このお礼は受け取れるかな。
アルスさんと話してから、ルシン君や入院中の子供たちの知り合いだというひと達が我先にとお礼を言いに来てくれた。
ルシン君はともかく他の子供たちが無事なのは、私じゃなくて守備隊の方々のおかげだから困ってしまった。
一応訂正しておいたけど、皆さん「いやいや。そんな、ご謙遜を。」と取り合ってくれない。
何だか、変な風に話が伝わってないかなあ。
クルビスさんも不思議そうだったけど、とりあえず笑って流していた。
「私だけじゃないです。クルビスさんがいなかったら、助けられませんでした。」
共鳴出来なきゃ、あの場で治療は不可能だった。
最悪、後遺症が残っていた可能性だってあった。
クルビスさんが「一緒に森にいってくれないか。」と言わなければ、今の元気なルシン君はなかっただろう。
だから、ありのままを話す。私一人じゃ何もできないから。
「いいや。あんたがいなきゃ声は届かなかった。それが一番の助けさ。」
キグスの糸のことだ。良く知ってるなあ。
ルシン君はルシェリードさんとクルビスさんで見つけたことになってるのに。
サリエさんってホントにルシン君と親しいんだな。
感謝の気持ちが魔素と共に伝わってくる。何だか胸が暖かい。
「役に立てたなら嬉しいです。」
「あんたがやったのは、すごいことだよ。自信持ちな。ってわけで、固い話はこれで終いさ。これでも食べておくれ。ルグの実だ。ちょっと酸っぱいけど、消化を助けてくれる。」
差し出された緑色の粒を一つ取り、口に入れる。
チェリーサイズの実は口の中で果汁が弾けて、さわやかな酸味と懐かしい香りが広がった。
「っっ。」
「種は出すんだよ。」
「…ぷっ。梅干し?というか、梅酒につけた青梅みたいな味だ。」
「おや。知ってる味かい?」
「はい。故郷の木の実と香りや味が似ています。大きさとか色が違うんですけど。」
「へえ。そうなのかい。良ければもういくつかお持ちよ。」
「ありがとうございます。」
梅みたいな味の木の実があるなんて思わなかった。
これは、梅酒が作れるかも?
サリエさんは、ヒト嫌いのエルフで登場したビルムさんの奥様です。
名前だけ先に「トカゲと散歩、あなたと一緒」に出てました。
やっと出せましたε-(´∀`; )




