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すみません。2時には間に会いませんでした…。

「もっと早くお礼に伺うべきだったのですが、このような形になってしまって申し訳ありません。」



「いいや。ここしばらくはどの隊も大変だった。忙しい合間を縫って来てくれたことに感謝する。」



「そうです。ルシン君からとてもお忙しいと聞いています。立派なお兄さんだって。来て下さってありがとうございます。」



「…ありがとうございます。」



 クルビスさんと私が礼を受けると、アルスさんはホッとしたように目を細めた。

 気にしてたんだろうなあ。しっかりしたお兄さんみたいだし。



 ルシン君は私が異世界初日に出会った銀色を持ったドラゴンの子供だ。

 普段はトカゲ型と呼ばれるトカゲの一族に似た姿で暮らしてるんだけど、その日は朝からドラゴン本来の姿に戻ってしまい、コントロール出来ないまま森の中を暴走気味に飛んでしまった。



 これは重大な違反で、子供でも減刑されることはないそうだ。

 ただ、その日はあちこちで子供の誘拐騒ぎがあったり、ルシン君の「いきなり本体に戻ってしまった。」という証言もあって、すぐに処罰することにはなっていない。



 一番の理由は、怪しい術を使う「赤い目のおじさん」の存在だ。

 急激な冷えで体調を崩した子供に治療所で声をかけ、怪しい術をかけて子供たちを集めていたらしい。



 結構な数の目撃証言や被害届もあって、ルシン君の暴走が意図的に引き起こされた可能性が浮上した。

 現在は、被害にあって重症化した子供たちを北の守備隊で治療することになったので一緒に預かっている。



 家族思いのとてもいい子だ。

 守備隊に務めているお兄さんをとても自慢に思っていて、お兄さんを支えようと家のこともルシン君がやっていたらしい。



「ハルカ様にはいつも面倒を見て頂いていると聞いてます。休憩時間が楽しみなのだと。」



「私の方こそ、いつもお菓子の試食に付き合ってもらって助かってます。ルシン君の味覚は鋭くて、感想がとても役に立ってます。」



 他の子供と違ってルシン君は元気だから、訓練や勉強はすでに始めている。

 その合間に差し入れをしてるんだけど、舌触りや飲みこみ易さなど中々的確なコメントをくれるので、それを参考に作り直したりしている。



 水菓子ももちろん試食してもらったけど、最初の頃はゼリーの部分が厚過ぎて、子供の喉では飲み込み辛そうだったので、子供用にはゼリー部分は薄く作ることになった。

 これは入院中の子供たちにも好評だ。



 美味しい物は気持ちを元気にしてくれる。

 最初は怯えていた子供たちも、最近はベッドから抜け出そうとしたりと元気な様子を見せるようになった。



 ちなみに、きな粉は大人が渋い顔をしたので、保留にしている。

 子供の内は口の中が敏感だから、粉っぽいのはむせる可能性があると思ったからだ。



 ルシン君の訓練や勉強の話をアルスさんは興味深そうに聞いていた。

 手紙のやりとりはしてるみたいだけど、直接、普段の様子を聞くのはまた違うもんね。



 年が離れてるのもあるんだろうけど、お兄さんっていうより保護者だなあ。

 なんか、うちのあー兄ちゃんみたいだ。



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