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メリアさんの挨拶の後、怒涛の自己紹介が始まった。
順番にロザリアさん、マリアさん、アリアさん、キアさん、ココアさん、クルミアさん、ルーアさん、エミリアさんと名乗ってくれる。
お、多い。覚えられるかな。勧められた料理はどれもピリ辛くらいで美味しかったけど。
皆さん、シードさんの妹だと名乗ったから、シードさんはいちばん上のお兄さんだということもわかった。
養子に引き取った子もいるそうだけど、みんな仲が良くてキャイキャイはしゃいでいる。
フェラリーデさんに教わった話では、ヘビの一族では、親と死別したり病気で一緒にいられなくなったりすると族長さんが引き取ることになっている。
この世界では子供が生まれにくいので、一族で大事に育てていくものだと認識されているからだ。
ただ、半分は実子なので、子供の生まれにくいこの世界にあって、アーネストさんご一家は街一番の子だくさんだと評判らしい。
シードさんは「うるせえ。」とげんなりしていたけど、リリィさんはにこやかに義理の姉妹たちと話していた。
リリィさんは一人っ子なので、義妹達とのおしゃべりは楽しいらしい。
「リリィ姉さま。今度お買いものに行きましょう。南の人魚の細工師がお店を出したのよ。とっても可愛いの。」
「ハルカさまも是非。これもその店で買ったのですけど、綺麗でしょう?とても軽いのですわ。」
私も混ざって、流行のアクセサリーやドレスの話を楽しく聞かせてもらう。
その間、女の子のおしゃべりには男性は入れないので、クルビスさん達は私達を見ながらお皿に山盛りの料理を消費しつつ、好きなことを話していたようだった。
たとえば、シードさんが荷物持ちやら保護者替わりやらで引っ張りまわされるので「実家にいると疲れる…。」と言うと、クルビスさんは「女性が多いとそうなるな。」と笑ってたりとか。
さらに、アーネストさんが「そろそろ嫁に行くはずなんだがなあ…。」と言うと、シードさんが「無理だろ。あれじゃ。」と失言をして、それを聞いた耳聡い女性陣から口ぐちに文句を言われて降参してたりした。
それをアーネストさんが笑って見ていたりして、本当に仲の良い家族だなと感じる。
そんな風に過ごしていると、ローザさんが私の手土産を持ってきて下さった。
どうも、挨拶がひと段落するのを待っていたようだ。
こういう気遣いも長の伴侶に必要なんだろうな。勉強になる。
「おおっ。これは美味いっ。これが水菓子か。まさしく水で包んでいるようだな。しっとりと口に溶けるようだ。」
「色もきれいだし。涼やかですわね。それに、こっちの粉も美味しいわ。粉っぽいのは苦手だけど、これなら美味しくいただけるわね。」
「どれどれ…ふむ。香りが良いな。水菓子に軽くかけても、蜜とともにいただいても美味い。「きな粉」だったか?単体でも美味いな。」
「ええ。いままで嗅いだことのない香りで、食欲をそそりますねえ。」
アーネストさんとローズさんはきな粉を気に入ってくれたようだった。
それを見て、娘さん達が一斉に食べ始める。それがまたにぎやかで…。
「蜜をもっと頂戴。」とか「そのままでも良くない?」とか話すスピードと食べるスピードが同じくらい早くて、食べたひとから感想を言ってくれた。
「参考にしたいから。」と感想をお願いしたんだけど、結果は「そのまま派」と「きな粉が好き派」にわかれた。
「そのまま派」は総じて粉っぽいのが苦手なのが理由だった。今後、粉っぽいの食感のスイーツを作る時は気を付けよう。
でも、皆さん楽しそうに食べてくれたし、水菓子自体は気に入ってもらえたみたいだから、手土産としては成功かな?




