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 とりあえず立ったままもなんなので、他のひと達は挨拶するにも座ってからとなって、手土産を渡すと床から一段高い、クッションの一杯ある場所へ案内された。

 山積みの料理で気付かなかったけど、その手前に床から少し高い場所といくつかの横長のテーブルが置かれていた。



 どうもそこが食事の席のようだ。

 座る順番は決まってないらしく、好きな場所に座るよう勧められる。



 クルビスさんと軽く相談して、他のひとと挨拶しやすいようにと端の方に席を取る。

 履物を脱いで座ってみると、窓から風が軽く吹いて来る涼しいお席だった。



「涼しい。」



「はっはっ。料理を食べると暑くなってくるからな。食べる席は風が通るよう設置してある。」



 思わず感想をもらすと、クルビスさんの隣に座ったアーネストさんが理由を教えてくれた。

 そうだった。ルシェモモの食事は基本的に辛めで、食べてると暑くなるんだっけ。



 普段はアニスさんとルドさんのおかけで普通に食事が出来てるけど、今回ばかりはそうもいかない。

 どこかで通らなきゃいけなかった道だ。頑張ってみよう。



「大丈夫か?ハルカ。心配なら、リリィに頼めよ?」



「アニスから聞いてますから、お任せください。」



 私とクルビスさんの向かいに座ってくれたシードさんとリリィさんが声をかけてくれる。

 気遣いが素敵だなあ。リリィさんにお任せすれば、大丈夫そう。



 でも、今後食べないといけない機会はどんどん増えるし、挑戦はしてみたい。

 だめならだめだって早いうちにわかる方がいいしね。



「ありがとうございます。どれも美味しそうなので、辛すぎないものなら一通りいただいてみたいなって思っているんです。リリィさん教えてもらえますか?」



「それなら、このトンジャオですよ。初めましてハルカ様。アーネストの娘でシードの妹のメリアと申します。こちらのトンジャオはピリッとはしますけど、リリィ姉さんも食べられるくらいなのでおすすめですよ。」



 リリィさんに食べられるものを教えてもらおうとすると、小皿に1つ乗せられた小龍包のようなものを片手に朱色のドレス姿のヘビの女性が挨拶に来てくれた。

 私が食べるものに困るんじゃないかと思って持ってきてくれたんだ。うれしいなあ。



 メリアさんは体色が黄土色で額から頭の後ろにかけてこげ茶の線が入っていた。

 ちらりと見えた尻尾には線が入ってなかったから、頭にだけ模様があるのかもしれない。



 胸元には小さな貝殻を繋げたネックレスを何連も付けていた。

 こういうところも南国って感じがするなあ。



「ありがとうございます。メリアさん。トンジャオというんですね。」



「ええ。手で持ってかじって下さい。これ、手拭きです。」



 私の横に回ってくれたメリアさんから礼を言って手拭きを受け取って、お皿の上のトンジャオに手を伸ばす。

 勧められた食べ物はひと口でもいいからその場で食べるのがマナーだ。



 かじってみると、ナンのような薄くて弾力のある生地に木の実とひき肉の御団子が包まれていた。

 小龍包とは違うけど、木の実の香りが香ばしいとても美味しい饅頭だ。



 辛味の方は最初はわかならくて、噛むごとに口の中がじんわりと熱くなるという何とも不思議なものだった。

 唐辛子的な辛さじゃないな。匂いも刺激がないし。



「美味しい。木の実の香りがいいですね。」



「よかった。気に入ってもらえたみたいで。そんなに辛くないでしょう?」



「ええ。これくらいなら平気です。ありがとうございます。」



「次はわたしよ。」



「あ。わたしも。」



 声の方を振り向くと、お皿を持った女性達が私の周りを囲んでいた。

 えっと、これ全部食べれるかな?挨拶だけでお腹いっぱいになりそうだ。

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