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「…。」
「言っただろ?うちの一族は集まるとなると、食事がつくんだって。それも大量の。」
「お聞きしましたけど…圧倒されてしまって。」
私が奥の山盛りの食べ物に釘付けになっていると、シードさんがリリィさんをエスコートしながら話しかけてくれる。
たぶん、市場で食事したときに聞かせてくれたことを言ってるんだろう。たしかに聞きましたけども。
「部屋の半分が埋まる」なんて、多少は誇張入ってると思うじゃないですか。
まさか、それが控えめな表現だったなんて…。
食事に圧倒される日が来るなんて思いもしなかったけど、これは現実だ。
入口の扉が閉まる重い音でハッとなる。
扉も大きかったし、ホントはもっと広い部屋なんだと思う。
だけど、壁際と奥の方にうず高く積まれた食べ物の山が部屋の奥行をわからなくさせている。
部屋の半分どころか大半を占めてるって言う方が正しいんじゃないかな?
これ、全部食べるの?
「はははっ。クルビスの伴侶殿は我が一族のもてなしは初めてだったか。」
「族長。ハルカは来たばかりですから。」
「おおっ。そうだったな。来て早速クルビスにつかまったのだったな。」
何だかすごいセリフだけど、クルビスさんは苦笑して頷いている。
とても明るいひとだ。思ったことを口に出すひとなんだと思うけど、言い方にトゲが全然ない。
悪気が無くて、周りに許されるタイプだろう。
しかも、明るいから笑って許される、すごく得なタイプ。
あー兄ちゃんもこんなタイプだったから、まるで親戚のおじさんにからかわれてるみたい。
恥ずかしくてこそばゆいけど、嫌ではない感じだ。
「そんな言い方ありませんでしょう?さあ、ご挨拶なさって。皆、待っておりますのよ?」
「そうか?まあ、そうだな。挨拶が先だな。ようこそ。トカゲの一族の次代殿と伴侶殿。我はヘビの一族が族長、アーネスト。以後、見知り置かれたい。」
「この度はおめでとうございます。クルビス様。そして、お初にお目にかかります。伴侶様。族長の伴侶、ローズと申します。」
「お招きありがとうございます。族長さま。伴侶さま。彼女が俺の伴侶、ハルカです。」
「里見遥加と申します。どうぞハルカとお呼び下さい。」
「うむ。よろしく頼む。では、始めるか。酒を持て。」
「えええ~。私たちわあ?」
私の名乗りが終わると、アーネストさんがお酒を配るように言った。
これだけかと拍子抜けしてたら、山盛りの骨付き肉や果物の陰から沢山の人がぞろぞろ出て来て驚いた。
どこに隠れて…隠れる場所は一杯あるか。
食べ物の山から10人くらいが出てくる。
それも若いひとばかり。シードさんのご兄弟かな?
だとしたら、すごい大家族だ。




