雨季ー47
「その模様憶えてるか?」
厳しい顔をしたキィさんがシードさんに質問する。
模様に種類があるとわかった以上、どんな種類があるのか解明する必要があるからだろう。
「少し。複雑だから紙に写してきた。時間がなかったから一部だけどいいか?」
「ありがたい。うわ~。またえげつない。ん~。じゃあ、ここはもしかしてこうじゃなかったか?」
キィさんがシードさんに敵の模様について詳しく聞く。
その話からキィさんが再現したのは、電撃や相手を凍らせる式だった。
私は見てもさっぱりわからないけど、クルビスさんもフェラリーデさんも顔をしかめている。
「こんなものを肌に掘るなんて…。」と言っていたから、私が異常なことだと感じたのはこっちの常識でも同じらしい。
「これだけ掘り込んでたら、長くは持たないかもな。尋問は急いだ方がいい。」
「ですが、術式を封じるのはどうします?西で捕まった連中は、部屋に術式封じをかけても、皮膚に直接魔素を流し込めば発動してしまいます。こちらのだって…。」
「こっちのは効果を高めるくらいだろうが、影響あるだろうなあ。ん~。」
どうやら術式の封じ方で悩んでいるみたいだ。
皮膚に掘り込んであるなら、模様を塗りつぶすんじゃだめなのかな?
「黒く塗りつぶせればいいのに…。」
「「「は?塗りつぶす?」」」
あ。声に出してた。
え~と。いいや。言っちゃえ。
「あの。黒い刺青なら、問題になったやつみたいな黒い塗料を塗れば、模様も機能しなくなるかなって思って…。」
素人の浅知恵です。
うう。視線が痛い。
「…出来るかもな。回収したあれなら魔素も通すから、塗りたくるだけでも効果あるだろう。」
「そう、ですね。要は発動しなければいいわけですし。」
「一部でもいいんだろう?」
「いざとなったら掘り込んで模様を塗りつぶせば…。」
あれ。何だか真剣に検討されてる。
いいのかな。思い付きなんだけど。
「よし。とりあえずやってみようぜ。こっちの術式の方が見ただけで効果があるかどうかわかり易いしな。あの塗料って地下だよな?」
キィさんが立ち上がって、階段の方に行く。
フェラリーデさんがそれに「いいえ。医務局です。分類では劇薬なので。」と言ってついて行った。
採用されちゃった。
いいのかなあ。効果なくても責任取れないけど。
「いいんだ。新しい見方はそれだけで貴重だ。」
「そうそう。今回の敵のやることは前例がほとんどないから、どうしたらいいか俺たちもわかんねえんだよ。思い付いたことがあったら言ってくれた方が助かる。ダメならまた考えるさ。」
クルビスさんとシードさんにフォローされて、ようやくホッとする。
それならいいけど。あんまりホイホイ採用されても不安になる。
どうやら、思い付いたことを口に出すのクセになってるみたいだ。
気をつけよう。




