雨季ー45
「え。二次災害とか二次被害とか言わないんですか?」
私が驚いて聞き返すと、クルビスさんも目を見開いて驚いている。
え。だって、災害や被害って連続して次々と起こるものでしょう?
「二番目の…。というのがわからない。」
困った様子のクルビスさんに不思議そうなキィさんやフェラリーデさんの様子が目に入る。
えええ。どう説明しよう。
「えっと。今回のヒビみたいに被害があると、そこに大量の雨が流れ込んで、その圧力でヒビが広がりますよね?ヒビとヒビが繋がってしまって地面がずれることもあるでしょうし。そういう災害や被害を元に、さらに災害や被害が出ることを二次災害や二次被害って言うんです。やっかいなのは二次災害や二次被害の方が被害が大きくなってることが多くて、事態の悪化を指す場合もあります。」
具体的な例を示して、知ってることをなるべく丁寧に説明する。
もしかしたら言葉の使い方が違うかもしれないけど、だいたいの認識はあってると思う。
私の説明に納得がいったのか、クルビスさん達も頷いている。
聞いてみると、ひとつの被害がもとでさらに被害が起きると、元の被害のひとつと認識されるんだそうだ。
だから、二次被害や二次災害といった概念がなかったらしい。
それに、被害が起こっても術式で復旧が早いから、悪化することが少ないのも原因だろうとクルビスさんは言っていた。
そういえばそうだ。
今回のヒビの修復だって術士さんがいるからすぐに出来たことで、それが普通なら次の被害なんて思わないだろう。
でも、それって術士さんの腕だのみだよね?
危険じゃないかなあ。その考え方。
自然災害って思わぬ事態を引き起こすものだし、もし雨季に台風みたいな強風が加わったら被害はものすごいことになるだろう。
そんな私の考えを聞いて、しみじみとした感じでキィさんが口を開いた。
「そうだよなあ。うちの一族もじいさま連中が雨季の時は毎年うるさいんだけどよ。そういう被害に次ぐ被害を警戒してるんだよな。元の湖で暮らしてた時は水害が多かったらしいしなあ。ホントはそういうのも想定しないといけないんだよなあ。」
それにフェラリーデさんとクルビスさんも同意を示す。
まったく無い考えってわけでもないみたいだ。ただ、必要に迫られなかっただけで。
「そうですね。術士たちの腕は信用してますが、今回のように街中で被害があったりすれば、対処が遅れる場合もあるでしょう。事態の悪化は常に考えなくては。」
「ああ。二次被害か。今回のことを後で分類する時に項目に入れてみよう。今回は術式が発端だが、次の被害への警戒は常に必要だ。」
私の言ったことが思わぬ影響を与えたみたいだけど、これは重要なことだからぜひ検討してほしいと思う。
災害への備えはやり過ぎることはないんだから。




