雨季ー43
そらっとぼけるクルビスさんに少しお説教をし、効果がないことに疲れているとフェラリーデさんとキィさんが戻ってくる。
キィさんは「じゃまして悪りいな。」って言ってたけど、どこから見てたんだろう…。
いや、見られてないことを祈ろう。
うん。大丈夫だってきっと。
「さっきキーファが戻ってきた。長様は中央に報告にいかれたそうだ。ああ、キーファは疲れてたから休ませた。魔素を使いッぱなしだったからな。それで、キーファから聞いたことを俺が話すのでいいか?」
クルビスさんとフェラリーデさんが頷いたのを確認して、キィさんが話し始める。
シードさんが西に向かった後、暴れはじめた仲間を抑えて犯人たちを捕らえたけれど、肝心の術式は危なっかしくて手が出せなくて苦労したそうだ。
そりゃあねえ。身近に爆弾があるのと同じようなもんだもんね。
気が休まる暇も無かっただろう。フェラリーデさんも疲れてたしなぁ。
「そんで、長様が来られて、術式の確認が済んだ後に地下の調査をしたら、地下まで到達してるヒビが結構あったらしい。」
キィさんの言葉にクルビスさんもフェラリーデさんも顔つきが険しくなる。
それってまずいんじゃあ?
「どれくらいの規模だった?」
「地上のよりかなり小さいな。ヒビの地上部分はどこも塞いだって言われてる場所だったから、悪化することはないだろう。」
良かった。地下は無事みたい。
水が地下に流れ込むなんて、そんな怖いことはないよね。
「そうか。他には?」
「長さまといっしょに塞いで回ったから、北は大丈夫だそうだが、シードの向かった西がな…。」
キィさんがめずらしく言いよどんでいる。
何か危ないことでもあったのかな?
「いくつかヒビが地下に到達して水もれ起こしてるらしい。さすがにそれは中央にも報告したみたいなんだがな、修復にはずいぶん苦労したみたいだ。もしかしたら、まだやってるかもしれないそうだ。」
西でそれなら、他の地区でもあるかもしれないなあ。
北は被害がほとんどないのに、差があるなあ。
あ。そっか。北はメルバさんとキーファさんがいたからすぐに直せたんだ。
ふたりとも特級の術士だけど、そんな称号持ってるひとなんて他にいないもんね。
これ、後でばれたら恨まれないかなあ。
北ばっかり贔屓にされてる、とか言われそう。
それにしても、術式以外でも北ばかりが対応が早いように聞こえるのは気のせいだろうか?
他の地区は後手に回ってる気がする。ザドさん達も危険な目にあってなきゃいいけど。




