雨季ー41
メルバさんの気遣いに感心していると、また通信機の呼び出し音がなる。
他の地区で何かあったのかと、部屋に緊張が走った。
今度もクルビスさんに変わったけど、何ともいえない表情で戻ってくる。
悪い知らせって感じじゃないなあ。何というか、面倒そう?
「なんかあったか?」
「新たなヒビですか?」
キィさんとフェラリーデさんが促すと、ようやくクルビスさんが話し始める。
どうやら、通信機の相手はメラさんだったみたいだ。
中央地区でもヒビが見つかったものの、雨季で魔素の扱いが上手くいかずに悪化してる場所があるらしい。
このままでは危険極まりないと、中央から術士さんを派遣することになったらしいんだけど…。
「中央は研究メインの術士も多いからなあ。」
「この時期に魔素を多く扱うことなんて滅多にありませんしね。」
「ヒビの規模はどれも小さいらしいが、数が多いらしい。術士の手が足りないそうだ。」
キィさん、フェラリーデさん、クルビスさんがそれぞれため息でも付き添うな顔で言う。
中央は研究者さんタイプが多いのかあ。
それじゃあ、こんな場合は難しいよねえ。
ただでさえ、雨季は雨の魔素が邪魔になるみたいだし、視界も悪い。
きっとヒビの修復にも時間がかかるだろうな。
キィさんはさっそく術士部隊の隊士さんに声をかけに上の階に向かい始めた。
「ヒビだけというのは厄介みたいだな。」
「ええ。修復には繊細な魔素を扱いますし、魔素の量も必要です。それが数多くでは、いくつ隊士がいても間に合わないでしょう。」
ヒビの修理って大変なんだなあ。
術式でぱぱっとやっちゃうんだと思ってた。
キィさんたちもすぐに帰って来たし。
でも、それってすごいことだったんだなあ。
「お待たせ。雨季でもヒビをふさげるのはうちでは6つだな。全員は無理だから、半分になるが…。いいか?」
キィさんが後ろに3人隊士さんをつれてやってきた。
スタグノ族のひとばかりだ。
スタグノ族って水に強いんだっけ。
その中でも雨季での魔素の扱いに長けてるひと達なんだろうな。
「ああ。あちらにも3つ、4つはいるそうだから。充分だと思う。ありがとう。…皆、疲れてるだろうがよろしく頼む。」
「はい。」
「了解しました。」
「お任せください。」
安定した魔素が安心感を与える。
うん。きっとこのひと達なら大丈夫だ。




