雨季ー40
近くにいた隊士さんが出ると、クルビスさんが呼ばれる。
どうなったんだろう。
ドキドキしながら待ってると、クルビスさんが戻ってきて「西に向かった班は全員無事だそうだ。」と吉報を知らせてくれた。
クルビスさんも心配だったらしく、目を細めて嬉しそうだ。
キィさんもフェラリーデさんもホッとした様子だった。
そこに、ちょうど外を巡回してた班が戻ってきて、同じことが伝えられる。
「良かった。」
「ばか。シード副隊長に限って、そんな、心配することねーよ。」
「だってさ!何が起きるかなんてわかんないだろう?」
外に出ていた隊士さん達はそう口ぐちに言い合いしつつも、すっかり明るくなった表情で話していた。
シードさんの実力を知っていても、やっぱり心配だもんね。
シードさん慕われてるなあ。
面倒見いいもんねえ。
「安心したら。これ食べてけ。外を走って魔素を使ったんだろう?」
あ。こっちはこっちで、お気遣いの紳士が。
ルドさん以下、調理部隊の面々がお盆に汁粉を乗せて、外周りから帰ってきた隊士さんに配っていく。
「これで一安心だな。他の地区は連絡ないんだっけ?」
「ああ。何かあればということだったから、何もなかったんだろう。」
「少しはあったかもしれませんけどね。」
盛り上がる隊士さんを背景に、クルビスさん達はやれやれといった様子だ。
西は犯人たちが向かったと聞いたけど、他の地区の被害はどうだったんだろう。
フェラリーデさんの言葉からすると、ちょっとした被害なら連絡してこないみたいだけど…。
各地区の守備隊は特色が強くて、あまり連携が取れていないってメラさんに教えてもらったけど、こういう所でも影響があるんだなあ。
街を守る隊がそんなんじゃ、今回みたいな敵には思うツボなんじゃないかな。
素人の私が言うことじゃないけど、ちょっと心配になる。
「この雨じゃあ、どこもやりにくかっただろうしな。まあ、中央から通達が来ないなら、ヒビもどうにか出来たんだろう。」
「そう願います。」
キィさんもフェラリーデさんに同意見みたいだ。
呆れているような魔素を感じる。
きっと、ちょっとやそっとじゃあ、連絡してこないって思ってるんだろう。
中央からの通達を待ってたら、間に合わないこともあると思うんだけど。
「知らせが早かったしな。ヒビに関しては長さまからの通達もあったそうだから、それも利いただろう。」
それにクルビスさんが苦笑しながら、情報を付け加える。
クルビスさんもそう思ってるってこと?うわあ。じゃあ、形骸化してるんだ。
「はあ~。あの短時間によくまあそこまで手回し出来たなあ。流石だぜ。」
キィさんが感心したように首を振る。
フェラリーデさんも驚いた顔をしていたから、知らなかったんだろう。
メルバさんって対応が早いんだよね。
お偉いさんって責任が重い分、決断にも慎重になるものだけど、メルバさんの場合は頭が良すぎて普通のひとの何倍も早く決断が下せるみたいだ。
メルバさんの言ったことなら他の地区の隊士さんも素直に聞けただろうし、それをわかってて言えるっていうのがすごい所だよねえ。
やっぱり2000歳の年の功は伊達じゃないってことかな?




