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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 新婚編
347/360

雨季ー38

「すみません。遅れましたか。」



 ちょっと高い声が聞こえて階段の方を見ると、茶色の単色の隊士さんが降りてくる所だった。

 頭の形からしてトカゲの一族のひとだとわかるけど、それにしては小柄なひとだ。



 どちらかというと細身でヘビの一族に似通っている。

 でも、安定した穏やかな魔素が、生きてきた年月を感じさせた。



 あんな隊士さんいたっけ?

 たくさんの隊士さんがいるから、全員を知ってるわけじゃないけれど、それにしては見たことないひとだ。



「大丈夫だよ。キジカ。私もさっき降りてきたところだ。」



「ああ。遅れてはいない。」



 茶色のトカゲさんは、ガソンさんとクルビスさんの返事にホッとした様子を見せ、私を見ると胸に手を当てて礼をしてくれる。

 礼を返すと、クルビスさんに背中を押されて前に出される。



「まだちゃんと紹介してなかったな。伴侶のハルカだ。」



「お初にお目にかかります。トカゲの一族、キジカと申します。任務で街を離れていたため、ご挨拶が遅れてしまいました。申し訳ありません。」



 ああ。お仕事でいらっしゃらなかったんだ。

 それなら見かけなかったのもわかる。



 仕方ないことだし、そんな申し訳なさそうにしなくても。

 真面目な方なんだなあ。



「とんでもない。お仕事お疲れ様です。初めまして。里見遥加です。どうぞ遥加と呼んで下さい。」



 丁寧に礼を返すと、何故か少し驚きを感じる魔素を感じ取る。

 私、何かやっちゃった?



「クルビスさま。良き伴侶様ですね。」



「ああ。自慢の伴侶だ。」



 さりげなくのろけないで下さい。恥ずかしい。

 結局、何に驚かれたのかはわからないまま挨拶は終わり、ガソンさんと同じ注意事項を聞いた後、ふたりは牢の見張り番に向かった。



 ただの見張り役とは違う、とても大変な任務だ。

 でも、ガソンさんもキジカさんも気負う様子もなく、穏やかなままだった。



 あれが経験豊富な隊士さんの余裕なのかな?

 他に適任者がいないってことだったけど、おふたりは魔素も大きかったし安定感があったから、ちょっとやそっとのことじゃ揺らがないだろう。



 後は、西に向かったっていうシードさんがどうなったかだ。

 相手の模様のこともすぐに伝えたそうだけど、隊長さんクラスでないと対抗できなかったっていうのに、大丈夫なんだろうか。



 クルビスさん達もそれが気がかりなのか、通信機の方をちらちらと見ては今後の打ち合わせをしている。

 祈るしか出来ないけれど、どうか無事に戻ってきますように。

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