雨季ー37
詳しく聞くと、キィさんとメルバさん達が地下についたとき、床には倒れている隊士さんが散らばっていたそうだ。
犯人たちはぐるぐる巻きにして、離れた場所でキーファさんが押さえつけていたらしい。
「リードに聞いたかもしれないが、見張りに立っていた幾つかの隊士が混乱したような状態になったらしくてな。仲間を敵だと思って攻撃してきたらしい。長さまによると、模様と魔素で時間を置いて利く仕組みみたいだ。術にかからなかったキーファやリードが取り押さえてくれて、そこに丁度俺と長様たちが到着したってわけだな。」
何それ。急に仲間が襲ってくるなんて、すごく怖い。
被害が少なかったのは、きっと犯人たちを最初のうちに捕まえられて、隊長さんクラスのひと達がいたからだろう。
そうじゃなかったら…。
ぶるる。怖すぎる。
だから、見張りは魔素の耐性のあるひとをって条件をつけたんだ。
キィさんがいろいろやってくれたみたいだけど、刺青で模様が目に見えるんじゃあ、対策も完全とはいえないしね。
「それから、報告にあった式を確認した。かなり複雑な術式で、壊すのは難しいっていうのが現状だな。数か所に魔素を放つ石を組み込んであったから、下手にいじると暴走する恐れがある。石は魔石だと思うんだが、見たことないやつだった。長さまとキーファが残って解析を進めてる。」
魔石かあ。
そういうのもあるんだなあ。
でも、魔石っぽいっていうのはなあ。
何だか得体が知れなくて、不気味だ。
「そうか。どれもやっかいだな。だが、それなら見張りは…。ああ。来たな。」
クルビスさんが階段の方を振り返ったので、私も同じ方向を見る。
すると、降りてきたのは青い体色のドラゴンの隊士さん。
「ガソン。休みにすまない。」
ガソンさんだ。彼がクルビスさんの言ってた隊士さん。
隊の中でも古株で、ドラゴンだから魔素の強さも折り紙つき。ぴったりだ。
クルビスさんが立ち上がって出迎える。さすがに私は降ろしてくれた。
それにゆるく首を振って穏やかに応じるガソンさん。
「いいえ。事情が事情ですから。キジカももうすぐ降りてくるでしょう。」
「お休みにすみません。適任者が他にいなくて。気を付けて下さい。相手は身体に術式の模様を掘り込んでいます。見ないのが一番ですが、もし少しでもおかしいと思われたら、誰かと交代して下さい。1階には治療部隊の隊士を必ず待機させますので、申し出て下さいね。」
「それと念の為、目を合わせるのも避けた方がいいかな。後は、牢に入らなければ、ガソンさんとキジカさんなら大丈夫だと思う。休みに申し訳ないが、今度の相手はどうにもやっかいで。」
フェラリーデさんとキーファさんが順番に忠告していく。
ガソンさんは厳しい表情で頷いて、「お気になさらず。心得ました。」と答えた。




