雨季ー35
そのままこっちを見て動かなくなったふたりを、見かねた隊士さんが地下に連れて行ってくれる。
いちゃいちゃを子供にじいっと見られるのって消耗する…。
「到着したか。」
私がぐったりしてると、クルビスさんが階段の方を見ながら低い声を出した。
空気がピリリと引き締まるのを感じる。
到着したのはたぶん犯人たちだ。
あの子たちが下に行った後で良かった。
地下は広いから、ここの物騒な魔素は届かないだろう。
階段を見つめていると、フェラリーデさんとキィさんが降りてくる。
その後ろからは紐で縛られたひと達がついて来る。
あれが今回の犯行グループ。本当に種族がバラバラだ。
ただ、スタグノ族だけは、皆同じように目の周りが黒いから、キィさんが言ってた狂信者のグループだっていうのがわかった。
目が死んでるんだよね。なのにぎらぎらしてて、気持ち悪い。
これは話が通じなさそう。
魔素も妙にねっとりしてて、まともな感じがしないし。
「地下調査隊、ただいま帰還しました。捕獲したのは8つ。…まずはこれらを牢に入れてしまいましょう。」
犯人たちの視線から遮るようにフェラリーデさんが前に立って、帰還の報告をしてくれる。
そこでやっと自分が緊張していたことに気づいた。
添えられていただけになっていたクルビスさんの腕も、今やしっかりと私を抱えている。
周りのひと達もそうだ。座っていた隊士さん達も立ち上がって出迎える風を装いながら、鋭い視線で様子を伺っていた。
「見張りは術式に耐性のあるやつがいい。こいつら、魔素なしでも催淫を使える。」
キィさんが物騒な情報を付け加えた。
催淫って、クレイさんが私にかけようとしたやつだよね?
それを魔素なしで?
え?どういうこと?
「詳しくは後で説明する。とにかく、こいつら牢に入れて、牢にも魔素封じの強化したやつ施してくる。」
「わかった。なら、こっちで見張りを選抜して向かわせる。」
「よろしく。ほら、こっちだ。」
キィさんの先導で、犯人たちは階段の右横の通路に連れて行かれる。
あっちに牢屋があるんだ。
階段挟んで逆側は厨房なのに、反対側は牢屋ってのもシュールだなあ。
手前は事務局だから、牢は奥にあるみたいだけど。
普通は牢屋は地下にあるものだけど、ここは地下に訓練場や入浴施設がついてるから、一階にあるみたいだ。
不思議な感じがするけど、これも異世界仕様だと思えばいいや。
それより気になるのは、さっきの帰還したメンバーにメルバさんやキーファさんはいなかったことだ。
地下に行ってから、何があったんだろう?




