雨季ー31
そんな風に待っていたら、隊士さん達が帰ってきた。
でも、フェラリーデさんやシードさん、キーファさんまでいない。隊士さん達の数も足りないようだ。
何かあったのかな。
でも、隊士さんの魔素はせっぱつまったものじゃない。
消耗も少ないようだし、良い知らせだといいけど。
隊士さんはクルビスさんとキーファさんの前に来ると、真っ直ぐ立って胸に手を当てて報告を開始した。
「地下調査隊、一部帰還しました。地下には侵入者が数個。襲撃を受けましたが、撃退しました。術式が発動しませんでしたので、シード隊長以下、体術で応戦、犯行グループを確保しました。地下の職員にケガをした者がいるため、リード隊長と治療部隊隊士が残っています。」
犯行グループ捕まったんだ。
職員さんも殺されたひとはいないようだ。良かった。
「意識のある者の話では西に幾つか移動したとのことで、緊急でシード副隊長が数個連れて地下の西に向かわれました。急ぎ西に連絡した所、同じく地下調査隊が向かっているとのことで、合流したら簡易型通信機で連絡を取ることになっています。そのため、キーファ副隊長も残られました。」
シードさんはまだ犯人を追っていて、フェラリーデさんは治療、キーファさんは連絡係かあ。
まだ油断は出来ない状態だ。
ん?でも待ってよ?
術式が使えないんじゃなかったっけ?
「術式が発動しなかったんだろう?通信機は使えたのか?」
同じことを感じたキィさんが隊士さんに質問する。
隊士さんはハッとしたように説明を始めた。
「現在は使えます。術式を阻害する式があったらしく、その発動をキーファ副隊長が一時的に停止されました。そのため治療の術式も同じく使えるようになりましたが、問題の式は破壊出来ないというのがリード隊長とキーファ副隊長の見解です。」
破壊出来ないかあ。
完全に止めたら爆発するとかじゃないよね?
ああ。だめだ。
怖いこと考えたら本当になりそうで。
「相手の種族は?」
「複数です。ヘビの一族、トカゲの一族、フェラルド族、スタグノ族はキィ隊長の言われたように、目の周りを黒くしていました。」
目の周りが黒い。これで、狂信者のグループだって確定した。
全員が狂信者じゃないかもしれないけど、厄介な相手なのにかわりはない。
キィさんもクルビスさんも顔をしかめている。
取り調べても白状し無さそうだし、数も把握しきれていない。
ただ、術式の阻害を仕掛けてくるくらいだから、魔素の強いひとはあまりいないんだろうと思う。
もしくは、術士が少ないか。
「キィ。地下に――。」
クルビスさんが言いかけた時、目の前に金の波が広がった。
ギョッとしたけど、次の瞬間には聞きなれた声がする。
「ちょっとごめんね~。地下に行った子帰ってきた~?」
ジャストなタイミングでメルバさんがやってきた。
何でわかるんだろう。困ってる時に来てくれるよね。
でも、メルバさんが来てくれれば、心強い。
変な術式も何とかしてくれるんじゃないかって気がする。




