雨季ー28
うわわ。まずいかも。
思わず口に出してたけど、根拠のないことなのに。
「どういうことだ?ハルカさん。」
「なんとなくで結構です。思ったことをお聞かせください。」
クルビスさんが大きな声で聞き返したから、キィさんとフェラリーデさんまで興味を持っちゃったみたい。
ただの勘なんです。なんて、言いにくいなあ。
「何でもいい。思ったことを言ってくれ。」
クルビスさんに再度促されて、思ったことを伝えてみる。
嫌な予感の部分ははずして、街で起こるこの騒動がまるで搖動のようだと伝える。
「キィさん達が塞がなければ、地下まで水が浸入していたかもしれないんですよね?地下って噴水とかがあって大事な施設なんでしょう?故郷も水害が多かったので、きっと、普通なら侵入してきた水の対応に追われて大変だろうなって思ったんです。」
頭の中を整理しながら、順を追って説明する。
もし、この予想が当っていたら、大変なことだ。きちんと説明しないと。
「でも、地下と連絡が取れないって聞いて。そしたら、本当の事件は地下で起きてるんじゃないかって、今の地上での騒ぎがまるで搖動みたいに感じてしまって。根拠も何もないんですけど。」
根拠がないことも忘れずに付け足しておく。
ただの予想。勘だ。でも、自分で言うのもなんだけど、私のこういう嫌な予感は外れたことがない。
「…キィ、リード。いくつか隊士を貸してくれ。地下に調査隊を出す。本部には俺から報告しておく。」
私の話を聞き終えたクルビスさんがキィさんとフェラリーデさんにお願いをする。
ふたりとも頷いて、すぐに隊士の選別にとりかかってくれた。
クルビスさんもシードさんに何人かの名前を伝えると、私を下して通信機の方に向かう。
そのことに室内の空気がピリピリし出す。
い、いいのかな?
素人の勘なんだけど。
「他に思い付かれたことはありますか?」
フェラリーデさんが穏やかに私に聞いてくる。
ええ?他にって…。えーと。えーと。
「もし、この事件を企んだひと達が地下にいるなら、奇襲を仕掛けてきそうだな…と、思いました。」
そう。相手はテロリストだ。
なら、隠れた場所から一気に攻撃、というのは十分あり得る話だった。
「奇襲ですか。」
「ええ。この季節に実行したのは、相手の数が少ないからと、動きがばれにくいからでしょうし。それなら、隠れた場所から一気に襲撃してくるというのがありそうだと思いました、けど?」
あれ。何だか視線が私に集まってる。
えっと。思ったことを言っただけで、根拠は無いんですよ?ホントに。




