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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 新婚編
333/360

雨季ー24

「ふう。それにしても、詳しく聞けば聞くほど、キィとキーファがいてくれて良かったですよ。雨季で術式を使える術士は滅多にいませんから。」



 戻ってきたフェラリーデさんが困った顔でキィさんとキーファさんが言う。

 確かに。話を聞いてると、ヒビだけだって話だけど、この大雨ならすぐに水がしみ込んで周囲は崩れ出しただろう。



 キィさん達の対応が早かったからこれだけで済んだんだ。

 雨季に術式を使うのが難しいってわかった後だと、余計にすごいことに思える。



「嬉しいがな。長さまのあれを見た後じゃなあ。」



「まったくです。」



 でも、ふたりはさっきのメルバさんの転移を見たからか、謙虚な反応だ。

 メルバさんは規格外だと思うから、比べても仕方ないと思うけどなあ。



 異世界のドラゴンの血も引いてるから、魔素の量もコントロールも群を抜いてるだろうし。

 そう思ったひとは別にもいたようで、フェラリーデさんが苦笑して答えている。



「あの方は我が一族でも特別ですよ。異世界の術式の知識をもとに魔素を活用されているので、我々が扱うものとは元々少し違うのです。」



「ああ。「冒険者」な。」



 フェラリーデさんの説明にクルビスさんが反応する。

 それにシードさんも加わった。



「異界の職だったよな?たしか。」



「ええ。何でも屋に近いそうですが、そこで、異世界の術式を使う仕事をなさっていたとかで、世界中を回って術式の知識を集められたそうですよ。その辺は長老方が詳しいですね。」



 あー兄ちゃんと一緒に旅してたって言ってたもんなあ。

 エルフの長命なら、あー兄ちゃんに出会う前から冒険者やってただろうし、あらゆる所を見てきたに違いない。



 フェラリーデさんの説明にキィさんやキーファさんは興味深々だ。

 リリィさんも知らなかったことがあるのか、驚いた顔で聞いている。



 本人からそれとなく聞いてはいたけど、メルバさんの術式には経験に基づく実績があったわけだ。

 さらには、こっちの世界に来てから2000年っていう途方もない歳月を、知識を求め、それを他人のために使い続けたんだもんね。すごいひとだなあ。



 エルフたちだけじゃなく、多くのひとから尊敬されるのがわかる気がする。

 普段のあの様子からはとてもそうは見えないんだけど。



 長老さん達がちゃんとした格好させたがるのわかる気がするなあ。

 まあ、ここの暑さでエルフの正装はキツイけどね。

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