雨季ー14
ちょっと迷いながらも、クルビスさんに「じゃあ、私たちで先に子供たちのお見舞いに行きませんか?様子もみたいし。」と提案すると、意外なことに「いいな。」と乗ってきた。
自分から言っといてなんだけど、お仕事いいのかな?と周りを見ると、シードさんがカウンターで汁粉を注文しながら片手を上げてたので、大丈夫そうだった。
「じゃあ、しばらく頼む。」
「おうよ。行ってらっしゃい。」
クルビスさんは私を片手で抱き上げると、さっさと子供たちの所に向かう。
いつもながら、移動はあっという間だ。
ただ、クルビスさんが階段を上ってると、「来たぞーっ。」「戻れーっ。」と小さな声が聞こてくる。
ふたりで顔を見合わせて、もしかして…と思う。
子供たちの部屋に行くと、輝く目で「おねえちゃん、クルビス隊長、いらっしゃーいっ。」と大歓迎された。
でも、私たちが何も持っていないことを確認すると「あれ?」っという表情になる。
うん。ごめんね。
おやつはまだ後なの。
「悪いな。皆のおやつは、今ルドが作ってくれている。もう少し待ってくれるか?」
と言うと、顔を見合わせた年長の子供たちが「じゃあ、汁粉じゃないの?」とがっかりした顔で聞いてきた。
子供用の汁粉を今作ってもらってることを説明すると、私の故郷のスイーツだという情報もすでに入手してるらしく、質問ぜめにあった。
「ねえねえ。また豆のお菓子なんでしょう?やっぱり種類は2つ?」
「スープって聞いたけど、甘いスープがあるんだね!」
「暖かいって聞いたよ。どれくらい?うちのスープはやけどするくらい熱いけど、汁粉もそう?」
…うん。皆どこでその情報仕入れたのかな?
すごく正確なんだけど。
「「「リード隊長が長様に自慢してるの聞いた。」」」
情報元フェラリーデさんかあ。
そういえば、フェラリーデさんの自慢を聞いてメルバさんも食べに来たんだっけ。
「よく聞き取れたものだ。術式で連絡を取ってただろうに。魔素にあてられなかったか?」
「大じょーぶっ。」
「距離はちゃんと取ってるから。」
「念のために魔素で壁作っといたし。」
クルビスさんの疑問に胸を張って答える子供たち。
小さい子たちが話を聞いて、「なるほどお。」って頷いてる。
こうやって、ノウハウが受け継がれていくのかな。
逞しいなあ。自分たちの興味のあることには一直線って感じだ。
こういうのも職人気質ってこと?
しばらく質問が続きそうだけど、お汁粉を待つのもこの調子なら苦にならないだろう。




