雨季ー13
「ん~。これだと、だいぶ魔素が濃いからね~。これがお汁粉の基準なら、ちょっとだけならいけるけど、沢山はあげれないなあ~。」
そうかあ。ちょっとだけって、どれくらいの量なんだろう?
あんまり少ないと文句が出そうだなあ。
「ちょっとだけとは?あまり少ないと子供たちが納得しないでしょうし、作り直した方が早いということですか?」
クルビスさんが私の代わりにメルバさんに聞いてくれる。
妙な表情になったメルバさんはすぐいつものにこやかな表情に戻って、少し考えるように腕を組む。
「う~ん。そうだねえ~。このお椀に3分の1かな~。ホントはもっと食べてもいいんだけど、スープ状になってるから一気に食べる子がいそうだしね~。ゆっくり食べなさいって言っても無理だろうし~。これを何かで薄めればもっと多くてもいけるけど、これ以上水はねえ~。」
うん。無理です。餡子風味のお湯になりますね。
やっぱり作り直した方がいいみたい。
問題は私がそれをやろうにも、クルビスさんが離さないってことだ。
そこに救世主の声が届いた。カウンターの方に戻っていたルドさんだ。
「餡ならすぐ出来るから、調整しましょう。時間もかからないし、隊士たちの分はすでにありますので。」
カウンターの中を親指で指しながら言う。
カッコイイ。これ、実際にすぐ出来るルドさんが言うから、カッコイイんだよね。
餡子を作るのは難しい。今も、すぐ出来るくらい餡子づくりが上達してるのはルドさんくらいで、餡子がちゃんと作れるのは半数くらいだ。
練り込む際に焦がしてしまう調理師さんも多い。
お砂糖は焦げやすいから、仕方ないんだけどね。
そういう基本知識も保護の対象だから、普通は知らないって聞いたときはさすがに呆れたけど。
ただ、他の調理師さん達も休みの日になると奥の厨房を借りて餡子を作っているそうだから、北の調理部隊の皆さんが餡子作りが得意になる日は近いと思ってる。
ふふふ。良い感じだ。ちょっと企んでるんだけど、餡子のレシピはいくつかここにいる間に再現して、食堂で提供してもらえるようにしたいんだよね。
そうすれば、お仕事終えたらここで和菓子食べつつクルビスさんをのんびり待てるし。
まだまだ先の話だけど、絶対に成功させてやる。
じゃあ、子供用の汁粉はルドさんにお任せして、私はメルバさんと一緒に子供たちをなだめてこようかな?
質問攻めになるだろうけど、このまま「おやつはまだ?」って大騒ぎになるよりいいだろうし。
…クルビスさんが離してくれればだけどね。
ドラゴンの習性ってやっかいだなあ。




