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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 新婚編
320/360

雨季ー11

 汁粉を食べ終えると、それぞれ転移陣や部屋の準備で上に向かっていく。

 クルビスさんと言えば、私を膝抱っこしたまま、食堂に待機だ。



「…クルビスさんはまた外に行くんですか?」



「いや。一番危ない場面は切り抜けたから、しばらくはここで待機だな。」



 そうなんだ。じゃあ、もう危ないとこに行かなくていいんだ。

 良かった。帰ってくると信じていても、やっぱり心のどこかで怖かったから。



 きっと、これからこうやって心配して、そしてホッとしながら出迎えるのが当たり前になるんだろう。

 でも、今はまだ慣れそうにないや。



「ハルカ?」



 ちょっとだけ、クルビスさんがいるってことを実感させて下さい。

 クルビスさんにもたれかかって、自分の汁粉に手を伸ばす。



 クルビスさんがスプーンを取り上げようとしたけど、無視した。

 ホッとして泣きそうになってる顔なんて見せられません。



 ぽふぽふ



 私の行動に何を思ったのか、頭を軽くたたくように撫でて好きにさせてくれる。

 しばらくその状態で汁粉を食べ終えた頃。



「はあ~。仲良いね~。さっすがハニームーンなふたり~。」



 聞きなれた独特の話し方でメルバさんが登場した。

 あれ?里に帰ったんじゃなかったっけ?



 雨季は転移陣が作動しにくいから、早めに帰って備えないとって言ってたのに。

 もう帰ってきたの?



「長。いらしてたのですか。」



 クルビスさんも驚いている。

 私がメルバさんをがん見しても怒らないくらいだ。



「街の様子がおかしかったからね~。ちょっと見に戻ってきたの~。あ。僕にも汁粉1つちょーだい~。」



 ウキウキと汁粉を注文するメルバさんを見て、きっとフェラリーデさんに聞いて降りてきたんだろうなあと思う。

 幸せそうに汁粉のお椀を受け取って、鼻歌を歌いながら、私たちの前まで来た。



「ちょっとお邪魔してもいい~?ごめんね~?急いでるから~。ヒビが入ったんだって~?」



 ヒビ?さっき、キィさん達も駆り出されたあれ?

 そんなに深刻なものだったの?



「ええ。森を出て西に20行ったところです。街の中までヒビは入り込み、住宅に振動が伝わっていました。」



「うわ~。それ、デンジャラス~。地下にも影響あるかなあ~。」



 地下?地下って、噴水とか収納されてる、たぶんデッカイ施設のある?

 そっか、ヒビなら地下まで言ってるかも。うわあ。怖いなあ。



「わかりません。地下担当者に連絡を送り、現在、確認してもらっている所です。」



「そっか~。僕、しばらくここにいるから、何かあるようなら言ってね?」



 メルバさんは発明家で研究家。

 きっと地下施設を作るのにも関わってるんだろう。



 そんなひとがいてくれたら心強いよね。

 クルビスさんもそう思ったのか、感謝の魔素を放ちながらお礼を言っていた。



「ありがとうございます。お心づかいに感謝します。」



「気にしないで~。んっ。ご馳走様。お汁粉、美味しかった~。ディー君が自慢するから飛んできたんだよ~。」



 あれ?メルバさんも汁粉目当てだった?

 物欲しそうにお汁粉の鍋を見てる様子からすると、そうかも。



 ルドさんが何も言わずに新しい汁粉のお椀と交換していったのが、何とも言えない。

 感動したのに…。汁粉の誘惑の方が強かったなんて。


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