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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 新婚編
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雨季ー8

「俺らも参加していいっすか?」



 カウンターから顔をのぞかせたベルさんが目をキラキラさせて聞いてくる。

 話が聞こえていたみたいで、他の調理師さん達も覗いていた。



「ああ。ピンクと紫のトラット豆が大量にいる。早速、煮てくれ。」



 ルドさんの指示の他の調理師さん達も一斉に豆の用意を始める。

 ルドさんは残ってる普通の汁粉を調理師さんたちに味見してもらおうと言って、奥の厨房に向かった。



 私とアニスさんも奥の厨房に一緒に向かい、残ってた汁粉にもう少しお水とお塩を足して、暖かい汁粉向きの味付けにする。

 冷たい汁粉用だと暖かくした時に甘すぎるんだよね。



「これが餡のスープっすか。水菓子がスープになったみたいっすね。」



 ベルさんが真剣な顔で汁粉を味見してくれる。

 どうやらこっちには甘くてスープ状のものはあまりないらしく、ベルさんにも珍しいらしい。



 味見のために数人ずつ交代で味見してもらってるんだけど、皆さんスープ状なのに驚いたお顔をされて、飲んでみて何かに納得した顔をして戻っていくんだよね。

 ルドさんが言ってたみたいに暖かい汁粉は好評だってことかな?



「甘いスープは初めてです。魔素も多くて温まりますね。口に残る食感も、これくらいならいけそうです。」



 同じく味見に参加していたバウルさんも味を確かめるように少しずつ汁粉を口にいれて納得したように頷いていた。

 豆のさらりとした感触が気になるのか、一口食べては口をもごもごと動かしていたけど、それも大丈夫だと思ったみたいだ。



「もう少しお砂糖を少なくしてもいいと思います。このままでもいいんですけど、後は中に半分くらいつぶした甘い豆を入れたり、お芋やお団子をいれたりしても楽しめます。」



 私が中に入れる具材の話をすると、二人とも驚いた顔をする。

 あれ?具があるのが不思議なのかな。こっちに来てから食べたスープ系の料理は全部具が入ってたけど。



「団子に芋っすか。団子は硬くならないっすか?」



「芋は味が混ざりそうな…。」



 ああ。豆腐白玉食べてないもんね。

 それに、こっちにサツマイモみたいな甘いお芋はないみたいだし、イメージはしにくいかも。



「すみません。誤解を与える言い方でした。お芋と言っても黄色のトラットみたいな甘いイモが故郷にはありまして、お砂糖を控えめにしてそれをいれます。後、お団子はこういうお汁粉に入れるための作り方があるんですが、深緑の森の一族の方のレシピを一部使うので、私の一存では教えられないんです。」



 ホントにこれくらいのことで教えられないなんて。

 レシピを教えられないと申し訳ない気持ちで告げると、予想以上にベルさんとバウルさんの反応はあっさりしたものだった。



「深緑の森の一族のレシピっすか~。それは今のおいらには無理っすねえ~。」



「俺も知り合いから教えてもらったレシピがいくつかあるが、きっとどれも違うんだろう。料理長に呼ばれなかったからな。」



 普通に受け止めてる。

 そっか。教えてもらえないのが当たり前だってルドさん言ってたもんね。



 う~ん。これをおかしいって気づいて欲しいなあ。

 まあ、今回は助かったけど。



「でも、黄色のトラットならあったっすよね?アメにしたやつ。あの味なら合うと思うっす。」



「ああ。そうだな。たしか、日持ちするからと大目に入荷してあるはず。料理長、いいですか?」



「…そうだな。いいだろう。1袋取ってきてくれ。半分使う。」



「了解です。」



 あれ。具が入ることになった。

 まあ、派手豆ならすぐに湯がけるから、具としていれるには丁度いいかな。

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