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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 新婚編
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雨季ー5

 刻んだクカの実はホントにちょっとしか入らなくて、何回も入れては砕いてボールに出してという作業を繰り返した。

 水でふやかす必要があるらしく、ある程度たまったら次のボールにっていうのを繰り返す。



 固い実だから、水分を入れてやらないと果汁を絞るのも大変らしい。

 このミキサーを使うのも大変さの1つだよね。ポタージュにもこれ使うなんて言っちゃったけど、後で訂正しておこう。



 この実は結構固かったから砕かないといけないけど、柔らかく煮込んだポタージュならすり鉢で十分だもんね。

 南国にすり鉢っていうのも似合わないけど、きっとメルバさんが作ってるだろう。



 絞ったカスも使えるらしく、私とアニスさんはカスを布から出して、ほぐす作業をやっていた。

 ルドさんが頑張ってくれたおかげで、お鍋に半分くらいのクカミルクが出来た。



「これくらい、か?」



「はい。ありがとうございます。後はこれにミルクとお砂糖を足して、沸騰させます。」



「ミルク?」



「あ。メルです。すみません。」



 牛乳のことはメルって言うんだっけ。ついミルクって言っちゃうなあ。

 食べ物の名前は私が名前としてしか認識してないせいで、魔素で言葉の意味が伝わらないから、余計にこういう間違いをやっちゃうんだよね。



 たとえ意味が通じても、「牛の乳」って言われたってわかんないよねえ。こっちには牛がいないし。

 「動物の乳」って意味を込めてフェラリーデさんと練習してみたことあるけど、こっちには料理に使う動物の乳って数種類あるから、これも伝わらないって却下になったんだよね。



「メルか。どれくらい入れる?」



「果汁と同じ量を入れるんですが、果汁は半分にしましょうか。本当に合うかわからないですし。」



 小さ目のお鍋に半分はあるから、結構な量だ。

 1リットルくらいはあるかもしれない。小さな実だったのに、良くこれだけ取れたなあ。



 私の案は受け入れられて、早速半分にしてミルクと砂糖を足して火にかけた。

 沸騰させすぎないように気をつけて、粗熱を取る。



 お鍋の内側にぽつぽつぽつと泡が浮いてきたら火を止めるくらいで丁度だ。

 ミルクは沸騰しすぎると泡だらけになるから。



「後はこれを冷やして、餡を溶かします。表面に固まりが出来たりしますけど、それは取ります。」



「なら、さっき冷やしたやつがちょうどいい頃だろう。これを冷やす間に、試食しよう。」



 私の説明に納得したルドさんがテキパキと準備を始める。

 今度はすりガラスの器が出てきて、それに冷たくなった普通の汁粉が注がれる。



 白っぽい器にパステル調のお汁粉が綺麗だ。

 これ、水菓子っぽい感じもするし、案外食べてもらえるかもしれない。



「これにさっきの団子をいれます。」



「水菓子のイメージで器を選んでみたんだが、団子を乗せる方が涼しげだな。」



「ええ。とても綺麗ですね。」




 白玉を乗せると、少し緑っぽいことに気づく。

 豆腐の色かな?元の豆は緑色だし。



 それがアクセントになってかわいらしい感じと冷たそうな印象が増していた。

 ルドさんもアニスさんもその見た目にいい印象を持ってくれたようだ。



 食べてみると、冷たい餡子の味と氷水で冷やしておいた白玉が良い感じに喉を通る。

 う~ん。久々の冷たい汁粉。美味しい。



 アニスさんとルドさんはと言えば、アニスさんはにこにこと平らげ、ルドさんは何かを確かめるように食べていた。

 対照的だなあ。まあ、ルドさんはプロの料理人さんだから。



「美味しいです!きっと長もリード隊長もそうおっしゃいます!」



「こんなに冷やしても団子が固くならないんだな。いつも食べる直前に茹でていたんだ。時間がかかるから、たまにしか出来なかったが、これなら手間が減らせる。スープは冷やしても味もいい。だが、この豆の崩れた食感が強調される気もする。苦手なやつもいるだろう。」



 感想も対照的。エルフの皆さんにウケそうなのはわかる。

 でも、汁粉の食感が苦手かあ。そういえば、きな粉やきな粉アメがダメってひとも結構いたっけ。



 水気があるから大丈夫かなと思ったけど、食感そのものが苦手なひともいるかもしれない。

 その辺は後でキーファさんに聞いてみようか。的確なアドバイスがもらえそうだ。

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