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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 リクエスト話
306/360

婚姻の式ー28(クルビス視点)

27の後半からの場面です。

「おめでとうございま~す!」



 街じゅうから祝いの言葉と魔素が降りかかる。

 まさか急ぎの式でここまでの支度をしてもらえるとは思わなかった。



 それに、これだけの数が集まって喜びの魔素で満たされている場なんて、今まで立ち会ったことがない。

 ドラゴンの一族での披露目の場でもこれほどではなかったな。



 皆が俺とハルカの婚姻をそれだけの慶事として受け取ってくれてるんだろう。

 ハルカもそれが嬉しいのか、少々腹立たしいが可愛らしく手を振ってくれている。



 ひらひらと揺れるベールが彼女の顔を隠し気味なのはいいな。

 日差しも強いし、下手にさらす必要もないだろう。



 異世界の衣装はハルカの華奢な身体を引き立てるだけでなく、見るものに驚きと期待を抱かせる。

 ここまで白を多く使った衣装は誰も見たことがないだろう、俺も最初は驚いたからな。



 だが、真っ白の純粋さがハルカの真っ直ぐで優しい気性によく似合っている。

 白の輝石がきらめきを与え、まるで海を自在に泳ぐ魚人の一族が陸にそのまま出て来たみたいだ。



 ん?シードが何か魔素で知らせてるな。

 隊士同士にしかわからない魔素の揺らし方で「前方注意」を呼びかけてくる。



 前には…。カメレオンの一族と赤の一族か。

 何もにらみ合うように場所取りをしなくてもいいだろうに。



 恐らくここが南で一番の繁華街だからだろう。

 お互い一番華やかな場所を取ろうとして、こうなったんだな。



 ハルカも気づいたようだ。

 迷っている魔素を出しながら、カメレオンの一族と赤の一族を交互に見ている。



 賢い俺の伴侶はどちらに先に手を振るべきか悩んでいるようだ。

 どちらを先にしても後々まで遺恨が残るだろうしな。面倒なことだ。



 ふたりで分担するか。

 それが一番収まりがいいだろう。



「俺が左、ハルカが右だ。」



 ささやいた言葉を瞬時に理解し、俺の伴侶はニコリと微笑んだ。

 わかったようだ。さすがハルカ。



 タイミングを決めて手を振ると、両側から一斉に祝いの言葉が飛び出す。

 何を言っているのか聞き取りにくいが、とにかく祝ってくれてるには違いないので笑顔で対応する。



「クルビス様、ハルカ様、おめでとうございます!」



「素晴らしい黒だわ!」



「黒のドレスが素敵です!」



 俺たちが分担したのは見てとれるだろうに、カメレオンの一族はハルカへの祝いの言葉を道の向こう側に向けて大きな魔素と共に投げかけた。

 赤の一族に喧嘩を売る気か?何を考えているんだ。



 魔素で窘めるが、俺の気が自分たちに向いてるのを勘違いしたのか、場にふさわしくない秋波を送ってくるものまでいる。

 後ろでアニスがハルカに先に進むよう提案してるが、これは俺たちが去ったら争いになるな。



 南の隊士たちがいるといっても、これだけの数のいがみ合いに避けるほどの手はないはずだ。

 仕方ない。少し思い知らせるか。



 ハルカを抱き上げ、共鳴する。

 俺たちの相性は最高だ。共鳴なんて息をするのと同じくらい自然に出来る。



「まあ!仲睦まじいこと!」



  「素敵な魔素ねえ。」



  「なんと、すばらしい魔素だ…。」



「調和」の効果を持つ黒の共鳴は2つの一族を宥めるのに役立ったようだ。

 その共鳴の大きさと影響力の強さに俺に秋波を送っていたもの達も叶わないと理解したらしい。



 少し混乱しながらも、状況を理解したハルカが俺をジッと見る。

 予想通りの状況になったことに満足して、笑って返すと呆れたような魔素が伝わってきた。



 効果的だったろう?

 だが、それだけじゃないんだぞ?



「疲れて来てるだろう?しばらく、こうしていよう。」



 先程から、歩みが若干遅くなっていた。

 街じゅうを歩き通すんだから、当然だが、こうしていれば負担も減るだろう。



 納得したのか、感謝の魔素を俺に伝えつつ、首にすり寄ってくる。

 少し驚くが同時に喜びがじわじわと湧いてくる。



 ハルカの故郷では、滅多なことで人前でくっ付いたりはしないらしい。

 伴侶と離れるなんて考えられないが、種族ごとの習慣というものはあるものだ。



 恥ずかしがるハルカを周りの奴らに見せるのもシャクで、最近は夜以外触れ合うこともあまりしていなかった。

 だが、今日は違うようだ。俺の伴侶になったことをハルカも皆に示したいらしい。



 ああ。もうこのまま部屋に引っ込んで、ずっとハルカを愛でていたいんだが。

 どうして、美しく装った伴侶を他の雄に見せないといけないのか。



 ドラゴンの血ゆえとわかってはいるが、伴侶が俺への執着を見せてくれたことが嬉しくて仕方ない。

 ああ。ようやく。俺のものだ。俺の伴侶だ。



 実際に部屋にこもるわけにもいかないが、存分に俺たちの仲を見せつけよう。

 そうすれば、さっきみたいな連中も消えてくれるだろうしな。

難読鳥類さまからのリクエストでした。

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