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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 リクエスト話
301/360

守備隊のおやつ

スタグノ族のお披露目が終わったくらいのお話です。

「ハルカ。水菓子を隊士たちにも一度食べさせたいんだが、いいだろうか?」



 クルビスさんがそんなことを聞いてきたのは、スタグノ族でのお披露目が終わってからだった。

 どうやら、お披露目の話だけでなく、キィさんやキーファさんに差し入れしたことや、きな粉の試食の話なんかがウワサになってるらしい。



 というか、術士部隊で差し入れを食べたスタグノ族が仲間に自慢したせいらしい。

 美味しいものを食べることに拘りのあるスタグノ族が自慢したとあって、あっという間に広まったとか。



 さらには、それをルドさん達厨房のメンバーが手伝ってるのも伝わっていて、厨房には連日「水菓子はいつ提供されるのか?」という問い合わせが隊士さんから寄せられているらしい。



 でも、ルドさんは私の水菓子はお披露目と交渉をスムーズにするための切り札になると考えてくれていて、私の許可なく作れないと返事をしたのだそうだ。

 それでも収まらないらしく、とうとうクルビスさんの方にまで話が届いたということらしい。



 …私に言えばいいんじゃないの?

 そう思ったけど、クルビスさん曰く、レシピの無料公開の件で私の身辺警護のレベルが上がっているので、隊長クラスでない限り、今の私に滅多なことでは面会出来ないのだとか。



「そんなことになってたんですか?」



「ああ。だから、最近はアニスの他にも隊士がつくことがあるだろう?」



 そういえば、リリィさんや他の女性隊士さんともお話する機会が増えたけど…。

 あれって、警備の一環だったんだ。知らなかった。



「新しいレシピを持つ者にはこれくらい普通だ。ハルカは自分がやろうとしていることの重要性をもっと理解した方がいい。」



 どうやら私がレシピ公開するって言った時点で警備を増やすのは決定事項だったらしい。

 周りのひと達は当たり前だと思ってたから、特に言いもしなかったわけだ。



 う~ん。思った以上の事態になってるなあ。

 和菓子の宣伝しただけなんだけなのに。



 こっちのレシピに対する認識ってちょっとおかしいよね。

 少なくとも基本的なレシピや技術、後は作り方までいかなくても料理そのものを紹介した本くらいはあってもいいと思うのに、それすらも禁止されてる。



 現トカゲの一族の家長のアルフレッドさんも今の制度に対して危機感を持っていらっしゃったっけ。

 私の無料公開で、情報の共有の有用性も示せればいいなと思う。



「そうだったんですか。…クルビスさんはどう思われます?私は隊士さんになら提供してもいいと思うんですけど。朝とか夜とか、一般のお客さんがいない時ならそんなに話も出回らないですよね?」



「そうだな…。ハルカが良いなら、厨房に提案してみよう。食べてみれば、ハルカの警護の重要性もわかるだろうしな。」



 いやいや。そんな重たい話でなくて。ただのおやつの提供ですから。

 もしかして、守備隊におやつとかデザートって感覚ないのかな?



「あの。もしかして、食事の後や休憩にフルーツや甘いものを食べたりしないんですか?」



「?フルーツを食べたいなら食事の時にメニューで選べばいいだろう?」



 不思議そうなクルビスさんに、異世界初日に食べたお皿一杯のフルーツが頭に浮かぶ。

 もしかして、こっちでフルーツってご飯なの?



 確かめてみるとその通りで、ルシェモモでは肉とフルーツが定番の組み合わせだとか。

 北はエルフがいる関係で穀物を使ったメニューが豊富らしいけど、他はフルーツが中心だそうだ。



 だから、フルーツを食べるのは食事の時だけというのが一般的認識らしい。

 しかも大量。それだとちょっと食べるには不向きだ。



 う~ん。だから、差し入れの時あんなに喜ばれたのかなあ。

 スイーツも最近人気らしいけど、皆さんと話してると嗜好品の印象が強かったしなあ。



 おやつの習慣がないなら、ちょっとした甘味の差し入れの習慣もないんだろう。

 それじゃあ、気軽にスイーツを楽しむっていうのが出来ないじゃない。



 よし。この際だからそれも提案してみようか。

 休憩の時に軽量の魔素補給ってことなら聞いてもらえるかも。



「あの、クルビスさん。隊士さんって交代の時とか魔素の補給はされるんですか?その、食事とかでなくても魔素を少しだけ補給するとか。」



「いや?基本は取らないことになってる。補給は必要になった時だけだな。だが、ハルカが差し入れたことで、水菓子くらいの魔素の量なら補給に丁度いいという意見が術士部隊からも出ているんだ。」



 クルビスさんの説明によると、もともと魔素の強い隊士さん達は「8割くらいまで魔素が減った」時だけ臨時補給はするものの、通常ではしないのだそうだ。



 魔素の補給をし過ぎると返って調子が悪くなるため、余分な魔素は取らないようにするのが習慣になってるとか。

 ただ、私が差し入れしたことで、軽量の魔素なら負担もないからいいんじゃないかという意見が出ているのだそうだ。



 これたぶんキィさんが提案したんだろうな。

 仕事の合間にスイーツが食べれるって。



「そうなんですか…。故郷では水菓子みたいな甘いものや少しのフルーツなんかを楽しみとして食事の最後に付けたり、休憩の時に食べたりしたんです。ちょっとだけ補給することを「おやつ」って言ってました。」



「そういうのなら、深緑の森の一族にそういう習慣があるな。リードも自分の机に菓子類を隠し持っているし。」



 そういえば、長老さん達が勝手におやつを探し当ててたっけ。

 エルフにおやつの習慣があるなら、定着するかも。



「じゃあ、一度隊士さん達に交代の時か休憩の時に食べてもらいましょうか。一度に全員は無理だから幾つかずつで。もちろん、厨房の許可が取れたらですけど。」



 私のこの提案はすぐに承認され、以後北の守備隊に交代時の「おやつ」が習慣化することになる。

 そこから、仕事の合間にスイーツや果物を楽しむのが一般化するようになるんだけど、それはまた別の話。


笹丸さんからのリクエストで守備隊のおやつ推奨を書きました。

次はもちろん甘口のカリーです。

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