デートー22
屋台の通りに戻ると、にぎやかさが声が聞こえてくる。
何故かさっきよりお客さんが増えてるみたいだ。
「ピック1つ!」
「こっちは3つ!」
「はいよ!ちゃんと並んどくれよ!」
萌黄色のおばさんの店も大盛況だ。
夜なのに皆起きてる。
さすがに子どもの姿はないけど、寝ないでいいのかな?
暑いからか、ここでは日が沈むとすぐに休むことになってるのに。
「今日は寝ないつもりだろう。祭りのときは夜通し騒ぐものだしな。」
夜通しって、徹夜ですか?
明日お仕事のひと…、あ、お祭りの次の日が休みってそのせい?
クルビスさんに聞いてみたら、その通りだった。
どうやら街をあげての祝い事の時は夜通し騒ぐことになってるらしい。
これはドラゴンの一族やヘビの一族にもともと祝い事で飲み明かす習慣があって、それがそのまま街全体での習慣になったのだとか。
まあ、街を挙げてのお祝いもそうあることじゃないからだろうけど。
「じゃあ、これからが稼ぎ時だっていうのは。」
「これから酒のつまみに食べ物を買いに来る客が増えるからな。もちろん、昼間で店を閉める所もあるが、この辺りの屋台は大抵夜遅くまでやっている。」
成る程ねえ。じゃあ、もめ事も多いんだろうな。
きっと隊士さん達は走り回っているだろう。
「それなら、隊士さん達も大忙しですね。差し入れ大目に買っていきましょう。」
「そうだな。」
少し奥まで進んで、まだ買ってない屋台の方に行く。
萌黄色のおばさんにお礼を言いたかったけど、お客さんがたくさん並んでいたので手を振るだけにしておいた。
伝わったようで、おばさんも手を振り返してくれる。
クルビスさんにはおばさんの食堂に連れて行ってもらう約束をしてるから、お礼はまたその時にちゃんと言おう。
真ん中くらいに行くと、道一杯にひとがいて皆屋台に並んでいた。
うわあ。すごいひと。買えるかなあ。
「あ。クルビス隊長とハルカさまだ。おめでとうございます!」
「おめでとうございます!買いに来られたんですか?でしたらここのスーメはおすすめですよ!兄さん、1つ先におくれよ。」
「お二方にならお代はいりませんよ!おめでとうございます!」
私を見付けた街のひとが次々と祝いの言葉と共に屋台の食べ物を差し出してくれる。
さっきみたいにアッと言う間に手の中が一杯になった。
これだけあれば、隊士さんへの差し入れも十分にあるだろう。
でも、さすがにこれだけのものをタダでっていうのは心苦しいなあ。
「あ、あの、お代を…。」
「いえいえ!こんなに良い魔素をいただいちゃあ、頂けませんよ!」
え?魔素?
クルビスさんを見るとそっぽを向いている。
もしかして…。
やっぱり!共鳴してる!
「クルビスさん!」
「どうかしたか?さあ、もう屋台も途切れるから、一通りは回れただろう。たくさん頂いたし、守備隊に戻ろうか。」
ええ。手の中も一杯ですからね。
じゃ、なくて。もう。また勝手に共鳴して。
「言って下さいって言ったのに。」
私がぷりぷりして言うと、クルビスさんは素知らぬ顔で「ハルカが可愛いのが悪い。」とかわけわかんないこと言うし。
全然聞いてないんだから。
これどうにかしないとなあ。恥ずかしいし。
共鳴ってどうやったら抑えられるんだろう。
今度、メルバさんに聞いてみよう。
帰りは早足だったから、もうすぐ守備隊につく。
結局、デートっぽかったのは前半だけで、後半は騒ぎに巻き込まれちゃったなあ。
まあ、おかげで詐欺のこともわかったし、楽しかったからいいんだけどね。
「また来ましょうね?」
「ああ。今度はこの辺の名物を教えるよ。屋台には向かないから、今日は出てないんだ。」
名物?それ食べてみたい!
わあ。楽しみが出来た。
次って言ったら、雨季の後になるよね。
クルビスさんが忙しくても、この辺りになら食事に出るくらいは出来るみたいだし、次は一緒にご飯を食べに来よう。
きっと次も楽しいだろうなあ。
クルビスさんと一緒にいるだけで楽しいけどね。
一応、これでデート編は終わりです。
次からはリクエスト話を書いていきます。




