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トカゲと散歩、私も一緒  作者: *ファタル*
番外編 式の後のデート
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デートー16

 クルビスさんと屋台の所に戻るとちょっとした騒ぎになっていた。

 どうやら酔っ払いの喧嘩みたい。



「おめえの腕が悪いんだろうがよ!」



「んだとう?お前の仕入れが悪いからだろうが!」



 淡いピンクのトカゲの一族の男性と淡い黄色のヘビの一族の男性が言い合っている。

 ふたりとも蛍光色な色合いだから余計に目立っていた。


 

 周りで「おい。誰か隊士さん呼んで来いよ。」「ビドーさんに知らせた方が良くないか?」なんて声も聞こえるから、もめ始めたばかりみたいだ。

 ふたりの叫んでる内容からすると、どうやらお仕事のことでもめてるみたい。



「…仕方ない。ハルカ。ここで待っていてくれるか?」



 今まで何としても私を離さなかったクルビスさんが私を地面に降ろした。

 隊長さんだもんね。もめ事は放っておけないよね。



 クルビスさんが行くと、言い合ってたふたりは今度は自分の言い分をクルビスさんに対してそれぞれまくし立て始めた。

 曰く、仕事の納期がぎりぎりになったことで、注文を切られそうになったそうだ。



 それがお互いのせいだと言い張っている。

 ピンクのトカゲの男性は染物の原料や布を仕入れているお店のひとで、黄色のヘビの男性はピンクの男性の所から材料を仕入れて染物をしている技術者のひとだ。



「そもそも、何で仕入れが遅れたんだ?…あー。物が渡してもらえないとかか?」



 クルビスさんがピンクの男性に質問する。

 そうか。色で差別があるなら、商品の仕入れにだって影響したりするかもしれないんだ。



「いえ、色で分けるようなとことは商売してませんので、それはありません。ただ、転移陣の準備が出来るのが遅くなってて。こないだの寒さのせいで、年よりの術士が辞めちまったもんですから。」



「ああ。聞いてる。術士が足りてないらしいな?」



「ええ。あ、転移局はよくやってくれてるんですよ?…でも、ここだけじゃなくて、街のあちこちでの話ですから。上手く送りたい時に荷物が送れなくて。」



 それで仕入れそのものが滞ったと。

 で、それをもとに商品を作ってる黄色の男性が納期が遅れた。



 …仕方ないんじゃないかな?

 街中で起こってることみたいだし。



「んなわけねえだろ!他の店が問題なく営業出来てんのに、何でお前んとこだけ仕入れ出来てねえんだよ!材料が無いなんて、仕事の出来ない言い訳だって言われた俺の立場はどうなる!」



「そりゃ、そいつがおかしいんだよ!他だってうちと似たり寄ったりな状況だ!皆知ってる!そうだろ?皆!」



 ピンクの男性の言葉に周りも頷いている。

 仕入れの状況が良くないのは共通認識みたいだ。



 それにしても、黄色の男性の話、それは取引先がひどいなあ。

 いるけどね。そういう取引先。で、ちょっとでも安くしようとかするの。私にも経験ある。



 私が働いてた会社は女子社員が多くて、私が入社した頃はまだ知名度がそれ程じゃなかったのもあって、舐められることもよくあった。

 無理な注文やセクハラまがいのことを言われることもあって、悔しい思いをしたこともある。



 商品の名前が売れてからはそういうのも無くなったし、何よりうちは社長がそういうの許さなかったから、そんなこと言う取り引き先はいつの間にか手を引いていたから、被害はひどくなかったけど。



 あれ、どうやって話を収めてたんだろう。今でも謎だ。

 問題が起こると、どこからか社長の耳に入って、そしたらいっつも向こうから手を引いてたんだよね。



 でも、こっちではそういう風に守ってくれるひとがいないんだろうなあ。

 色が淡いって、それだけハンデがあるってことなんだ。



「ほお。うちのシマの連中相手にそんな舐めた口きくやつがいたとはね。」



 ふたりの言い合いがヒートアップしようとするその時、ビドーさんが登場した。

 親分の登場に場の空気がやわらぐ。



 いいタイミングだなあ。

 あ、向こうにメロウさんがいるから、呼ばれて一緒に来たのかな。



「旦那、お手数おかけしました。こいつらの相手はあっしがしますんで。どうぞ、ハルカ様とご一緒して下せえやし。」



 ビドーさんの言葉に視線が一気に私に集まる。

 いやいや。さすがにこの状況で気楽に屋台を楽しもうとか思えませんから。ねえ?クルビスさん?

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