デートー6
「こんばんわ。ビドーさん。」
私が挨拶すると、ビドーさんが驚いたような顔をする。
ん?何か変なこと言ったかな?
「こりゃ、どうも。ご丁寧に。うんうん。お聞きしてた通り、いいお嬢さんだ。」
「ウワサか?」
「いえ。ルシェリード様がお忍びでいらしたときに。良い嫁が来たと上機嫌でしたよ。」
…ルシェリードさん何話してるんですか。
それにお忍びって、あの金の体色で忍べるんだろうか。いろいろ気になるなあ。
「何をやってるんだか…。」
あ。クルビスさんも呆れてる。
まあそうだよね。お忍びで来てるときまで嫁自慢って。
「ははは。まあ、いいじゃありやせんか。それだけお喜びになってるってことですよ。さあ、こんなとこで話すのもなんです。どうぞ、こちらへ。皆、待ってますんで。」
ビドーさんの案内で屋台の並ぶ市場の方に移動する。
顔役のビドーさんが現れると、陽気に酔っぱらってるひと達も挨拶してくる。
ビドーさんはそれに鷹揚に答えて、「飲みすぎンなよ。」とか「やってるな。」とか声をかけていた。
何て言うか、時代劇とかで見る親分さんって感じだ。
「おお。いらっしゃった。クルビス様、ハルカ様、いらっしゃいませ!ビドーさんも!」
「俺はついでかよ。」
「今日の主役はおふたりだろう?」
「ま、そりゃそうか。」
屋台に近づくと、夕方話したおじさんが声をかけてくれる。
ビドーさんとは顔見知りらしく、お互いにからからと笑っていた。
それに気づいた他の屋台のひと達が口ぐちに「いらっしゃいませ!」「是非、うちも食べてって下さいよ!」と声をかけてくれる。
それに引き寄せられるように、街のひと達も集まってきた。
「おめでとうございます!ここのミグは最高ですよ!おばちゃん、ミグ2つ。」
屋台の料理を買っては次々と勧めてくれる。
えっと、ちゃんと買うつもりだったんだけど。
「貰ってやって下さい。皆、おふたりが来て下さったのが嬉しいんで。」
そっか。これって街のひと達の気持ちかあ。
うん。今日は結婚式だったんだし、ありがたく貰っておこう。
「じゃあ、ありがたく頂こうか。」
「はい。ありがとうございます。」
笑顔で受け取ると、その後も屋台のご主人やおかみさんにも「うちのも!」と勧められて、両手の中があっという間に食べ物で山盛りになった。
クルビスさんに抱っこしてもらってるけど、これ、クルビスさんにも持ってもらった方がいいかも。落としたりしたら申し訳ない。
「一度、何処かで食べさせてもらおうか。」
「それならこちらへどうぞ。うちのかみさんの店ですが、今夜は宴会場にして開放してるんでさ。」
ビドーさんのありがたい申し出に頷いて、後でまた来ることを約束して屋台通りを一度離れることになった。
でも、これだけ食べて、後で食べられるかなあ。それが少し心配だ。




