デートー5
星街を後にして、今度は北西の市場に向かう。
風にのって、いい匂いが漂ってきた。
「お腹すきました。」
「ははっ。俺もだ。歩き通しだったもんな。」
北に戻った時に結構しっかり食べたんだけどなあ。
今日はお腹が空くのが早い気がする。
「それに、あれだけ共鳴したら、魔素も減ってる。たくさん食べよう。」
あ。そっか。共鳴かあ。
あれって結構魔素を使うからなあ。
初めて共鳴をしたのって異世界初日だけど、あの時もお腹が空いて結構がっつり食べたんだよね。
最初の方は太るのが怖くて食べれなくなったりもしたんだけど、魔素を使ってるからだって教えてもらってからは、共鳴や魔素の訓練の後は意識して軽食を取るようになった。
ただ、今日の共鳴の半分以上は勝手になってたり、クルビスさんが勝手に調整したからで、私の中では共鳴をたくさんしたという認識は無かったから思い付かなかったなあ。
そうそう、共鳴と言えば。
「共鳴、そう、クルビスさん勝手に共鳴してたりしたでしょう?あれって、結構ビックリするから、言って下さいね?」
「ハルカがいると勝手になるんだ。抑えようがない。」
そんな馬鹿な。
確かに、共鳴が起こりやすい番だってメルバさんにも言われてますけどね?
クルビスさん、あなた調整できるでしょうが。
だから、普段は一緒にいても共鳴が起こることは無いんだし。
「あれは我慢してるんだ。独身のやつに恨まれるしな。」
だから、モノローグに突っ込まないで下さい。
共鳴はしてないみたいだけど、どうして私の考えがわかったんだろう。
「ハルカはわかり易いから。だから、少し心配だ。」
顔に出てるってことですか?
…うんって頷かれた。そうですか。
ウソをつくのは上手くないって自覚はあったけど、考えが顔に出やすいっていうのは知らなかった。
これから職探しもあるのに、さすがにこれじゃあまずいよね。
営業スマイルくらい練習しとかないと。
こっちの笑顔は歯を見せちゃだめだし、結構難しいんだよね。
「あまり、他のやつに愛想よくしなくていいぞ?」
「そういう訳にはいきませんよ。お仕事もありますし。」
「仕事?決めてるのか?」
そういえば、雑貨や物を扱う仕事がしたいとは思ったけど、具体的には決めてなかったなあ。
こっちに来てすぐに結婚することになって、準備に追われてたし。
「いいえ。まだ具体的にどういうお仕事があるか知りませんから。でも、仕事してて無愛想っていうわけにもいかないでしょう?」
「む。まあ、そうなんだが…。」
クルビスさんはまだ納得がいかないみたいだ。
でも、こればっかりはねえ。どうにか納得してもらわないと。
「おや、クルビスの旦那!いらして下さったんで?」
クルビスさんと話していたら、聞いたことのある男性の声が聞こえてきた。
岩のようなお顔のビドーさんだ。
そういえば、この辺りの親分さんだっけ。
見回りされてたのかな?まずはご挨拶しようか。




