デート-4
しばらく2人で異世界の夜景を楽しんでいると、下が騒がしくなってきた。
どうやら、私たちが上にいるのに気づいた街のひと達が集まってきたみたいだ。
「そろそろ降りるか。このままいたらもっと集まりそうだ。」
「そうですね。屋台も行かないといけませんし。」
降りる時ものぼりと同じく荷物担ぎだったけど、違うのは降りた途端周りを囲まれたことだった。
どうやら皆さん昼間は他の地区で屋台を出していたりして、私たちの姿を遠目でしか見れなかったらしい。
口ぐちに「おめでとうございます!」と言ってくれて、涙ぐんでるひとまでいた。
皆さんどうしても直接お祝いを言いたかったらしく、その願いがかなったと言ってくれる。
そんな素敵なことを言われたら、感動するしかないじゃない。
昼間さんざんうるうるしてたのに、また目がうるんできて「ありがとうございます。」とちゃんと言えなくなる。
「ありがとう。ハルカは感動して言葉が出ないらしい。」
クルビスさんが私を片手抱きしたまま、心境を代弁してくれる。
皆さん私の顔を見てわかってくれて、にこにこと頷いてくれた。
「名残惜しいが、これからまだ回る約束をしている所があるんだ。これで失礼するよ。」
クルビスさんがこの後のことを伝えると、皆さん道を開けてくれる。
隠れスポットを教えてくれた学生さんにお礼を言うと、その場を後にした。
「このまま屋台まで急ごう。また囲まれるだろうしな。」
「そうですね。素敵な夜景も見れましたし。」
そう決めると、クルビスさんはあっという間に星街を通り抜けた。
クルビスさんにとっては普通の移動なんだろうけど、私には全力疾走に近い速さだ。
だから、色とりどりの光が照らす道がまるで私たちを取り巻いているようにも見える。
それに周りはあまり驚いていなかった。
つまり、この移動速度が標準的なものってことだと思う。
身体能力の差はわかってたつもりだったけど、まだまだ認識が甘かったみたい。
「ここで終わりだ、ハルカ、振り返ってごらん。」
何だろう?あ。
クルビスさんに言われるまま振り向くと、美しい陽球の位置が少しずつズレて、道の両脇にまるで波模様みたいなカラフルな線が出来上がっていた。
すごい。
こいう調整ってすごく難しいと思うのに、道の両脇とも綺麗に対になっている。
「綺麗…。」
「すごいだろう?この仕掛けは意外と知られていないんだ。おじい様に教えてもらった時は俺も驚いた。」
ルシェリードさんに教わったんだ。
知られてないってことは、作られたのは結構古い話かもしれない。街が出来た頃と同時に作られたとか。
もったいないなあ。
こんなに綺麗なのに。
花陽球は電飾みたいに目に痛くないから、いつまでも見ていられる。
私がうっとりと見入っていると、それに気づいた街のひと達も何事かと振り返り始めて、ザワザワと騒がしくなってきた。
「周りも気づいたか。せっかくの仕掛けだ。もっと広まってくれたらいいな。」
「そうですね。」
こんなにすごい仕掛けなんだもん。
もっと知られていたっていいくらいだ。




