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薬師通りは短くて、少し歩くと住宅街に入った。
成る程。本屋街や星街に比べたら規模がかなり小さい。
薬師「通り」って呼ばれるわけだ。
この先は学校があるから、その手前で左に折れて北東側の住宅街をぐるりと周るように進んでいくことになっている。
「ハルカしゃまだ~。」
「おめでとう!」
住宅街に入ったからか、子供たちの姿が増えて小さい子たちも手を振ってくれている。
守備隊にいる子たちより小さい。もう寝なくていいのかな?
周りがにぎやかだから寝れないかな。
お父さんに抱っこされて寝てた子も、周りの騒ぎに起き出したりして一層にぎやかになる。
寝てていいよ~。ありがとう。
あ。笑った。小さい子は口をカパッと開けて笑うんだな。
あくびかもしれないけど。
あ。小っちゃい子が隣の大きな子によじ登ってる。
「でと~。」
…おめでとう、かな?
可愛いからいいか。手を振りかえしておこう。
この辺りって小さい子が多いなあ。
新しい住宅地なのかな?体色の淡い色の子が多いみたい。
「…なあ、子供が増えてねえか?」
「ああ。また増えたな。」
ごく小さな声でシードさんとクルビスさんが話している。
私は補聴器を着けて傍にいるから聞こえるけど、他のひとには聞こえないだろう。
顔はにこやかなままだし、手を振ってくれてるひと達にも自然に振り返している。
こういうのも隊長さんの顔なんだろう。ちょっとドキドキする。言わないけど。
子供が増えてるみたいだけど、何かあるのかな。
お仕事に首を突っ込む気はないけど、気になる。
悪いことでなければいいけど。
あ。あっちでも手を振ってくれてる。お~い。
「ハルカ様~。抱っこしないの~?」
ん?抱っこ?
私が?
「クルビス隊長抱っこしてた~。」
あ。中央の式典のことかな。
違うって言いたいみたいだ。
「そうだな。やるか。」
何がそうだな?
…周りの子がきらきらした目で見てくる。
抱っこ見たいの?そんなに?
頷かれた。共鳴してないのに伝わっちゃったよ。
「えっと。お願いします。ルシン君、…ありがとう。」
察しのいいルシン君は、さっさとドレスの裾を放していた。
クルビスさんが私を子供抱きにすると、周りから歓声が上がる。
そんなに見たかったのかなあ。
抱っこって人気なの?




