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イルミネーションを見せてくれたひと達のいる場所に向かって、ひとりひとりにお礼を言う。
あれだけの輝きをだそうと思ったらかなり魔素を使ったはずだ。
きっとかなり疲れてるだろう。
それでも皆さん笑顔でお祝いを言ってくれる。
「その白い石、海の輝石だったんですねっ。何て美しいんでしょう!」
「白の布に白い花もいい組み合わせですね。」
「刺繍が入ってるから、ドレスに負けてないんですね…。」
ついでに、がっつりドレスを観察されてる。
デザイナーさんだもんね。間近で見たら余計気になるだろう。
でも、どなたも白は「使えない色」だと認識してたみたいだ。
「着飾るための白」にとても驚いている。
「そのデザイン、ハルカさまの故郷のものとか。歩きにくくないですか?」
「ちょっと。」
「いいですよ。えっと、少し歩きにくいです。これはマーメイドドレスといって、魚人をモデルに作られたものなので、形が大事なんです。」
「ああ。では裾はひれなのですね?」
「はい。」
「「「成る程。」」」
皆さんの研究熱心さに押されそうになる。
まあ、変わった形のドレスだからだろうけど。
それ以上にドレスに「白」が使えたことが彼らには衝撃なようだ。
でも、嫌悪は感じない。
純粋に驚いているのが伝わってくる。
私の故郷の習慣で押し通したけど、そのおかげで「自分たちの認識と違う」という前提で見てもらえたからだろう。
今日のことが特別でなく、「前例」として根付いてくれればいい。
そして、特別な時に白を身につけるのが当たり前になってくれれば…。
「もういいか~?そろそろ次に行くぜ。」
見かねたシードさんが声をかけてくれる。
私もクルビスさんもデザイナーさん達に質問されて止まっていたから。
クルビスさんはクルビスさんで、反対側で式服について聞かれていた。
今日の式服の刺繍は1級クラスの技術者の手によるものらしく、見せて欲しいと頼まれていたんだよね。
もっとお話して白を使ってほしいけど、もう移動する時間だ。
まだ日の入りまで時間があるけど、北は広いからね。
「ありがとうございました。」
「あ、あの。最後にひとつだけっ。その日よけの刺繍はどなたが?」
「深緑の森の一族の長様です。」
そう答えるとクルビスさんの元に行く。
ちょっとだけ振り返ったら、皆呆然と顔を見合わせていた。
そういえば、アニスさんもリリィさんもメルバさんが刺繍してたことに驚いてたもんなあ。
これって細かい図案で、刺繍できること自体がすごいみたいだし、メルバさんって技術者でも食べていけるよね。




