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色鮮やかな布たちに見送られて、さらに奥にまっすぐ進んでいく。
この奥はデザイナーさんの工房やスタグノ族のお店が並んでいるはずだ。
マルシェさんの工房もこの辺りにあったはず。
ん?街のひとが左右の階段状のスタンドみたいな所で綺麗にならんでる。
「おめでとうございます!」
手前にいたひとがお祝いの言葉を叫んだかと思うと、皆さんが一斉に顔が隠れるくらいの板のようなものを掲げる。
黒い板だ。あれはたしか鏡に使われるやつ?
魔素を通すと姿が映るっていう。
その板が色とりどりに輝き始める。
え。光るの?あれ。
知らなかった。
「おおっ。」
「光った?」
シードさんとクルビスさんも驚いている。
あれ?光るのは一般的じゃないみたい。
それぞれの魔素の色で光った板が、点滅したり、波打つように揺らいだりする。
すごく綺麗。まだ明るい時間だけど、色ははっきりと見える。
個体の魔素だからかな?
生きるエネルギーそのものだから、輝きが強いのかもしれない。
「ワース君、こっちおいで。すっごく綺麗よ。」
「すごいっ。ぴかぴかですっ。」
アニスさんがルシン君を前に出して、この光の芸術を見せている。
こんなにきれいなの、見なきゃ損だよね。
あっという間のショーだったけど、すごく綺麗だった。
終わった途端、拍手と魔素で感激を伝える。
「すごく綺麗でした!ね?クルビスさん!」
「あ?ああ。素晴らしい歓迎だった。こんなのは初めて見た。」
クルビスさん、ちょっと放心状態だったみたい。
こっちじゃあ、イルミネーションって無さそうだもんなあ。
そりゃ驚くよね。
シードさんは…、あ、固まってたのから立ち直って拍手喝さいを始めた。
「すげえ!こりゃすげえよ!」
興奮してるみたい。すごかったもんね。
ルシン君とアニスさんはというと、目をキラキラさせていた。
「はあ。あんな魔素の使い方があるなんて。知りませんでした。」
「とっても綺麗でした!あの光るの。僕でも出来るでしょうか?」
光の模様より、自分で光らせたいみたい。
アニスさんはもちろん、ルシン君も術士志望みたいだし、魔素の新しい使い方には興味深々なようだ。
「皆、この辺りに工房を持つ若手です。鏡石に魔素を通し過ぎると光るのが最近わかりまして、それを応用してみました。中央には報告いたしましたので、またお耳に入ると思います。」
「そんな効果があったなんて、知らなかった。この応用も見事だ。考えたのは?」
「応用はこの若者たち皆で相談して決めたようですが、光るのを見つけたのはマルシェです。」
マルシェさんが、鏡の板が光るのを発見したの?
あ。そういえば、採寸の時も、鏡をもっとよく映らないかと何度も調整してたっけ。
きっと鏡の調整の時に偶然光ったんだろう。
でも、それをこんなイルミネーションに応用するなんて。
この辺はデザイナーさんが多いから、芸術的なセンスが他とは違うんだろうな。
私だったら、「鏡が光っても仕方ないのに。」って思って終わりだ。




