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鮮やかな織物たちを眺めながら、それぞれの工房のひと達に挨拶していく。
共鳴でも感謝を伝えながら移動していくと、行く先々で、皆さん目を細めて「おめでとう」と言って下さった。
そんな風にゆっくり進んでいくと、タペストリーに変わって今度は色鮮やかな布が並ぶようになった。
今までは織物だったけど、今度は布を縫い合わせていて、布の組み合わせで模様になるようにしている。
パッチワークだ。
ふっくらしてるから、キルトかもしれない。
それでも大きいから、作るのは大変だっただろう。
これも今日のために作ってくれたのかな?
「この辺りから染めの型を作る工房や染料の工房、アクセサリーの型を作る工房が増えるんだ。さっきの織物の工房で作った布をここの型と染料で染め分ける。」
染物の工房。
じゃあ、あの布は染めた布のあまりを使ってるのかな。
パッチワークもキルトも、元は別の用途で使ってた布をもう一度使えるようにしたものだし。
試しに染めることもあるだろうから、材料はたくさんあるだろう。
「これもすごく綺麗ですね。」
「ああ。雨季の前なのに、これ程の仕上げとは。」
雨季?雨季が何の関係が…。
あ。雨季の後ってコンテストがあるんだっけ。
これはコンテスト用ってこと?
さっきの織り物に関してはあのヘビの一族の親方さんが発起人みたいだけど、これは違うみたいだ。
「クルビス様!どうです?うちの伴侶たちの作品は?おふたりに見せるんだって、雨季の前に張り切って作ったんですよ!」
さっきのヘビの一族の親方みたいに、貫録のあるトカゲの一族のおじさんが説明してくれた。
伴侶たちって言ったから、複数で1つの作品を作ったみたいだ。
技術者さんの奥さんたちで作るのかな?
手を振ってくれてるの、女性が多いし。
家事もあるだろうに、小さな布をカットして縫っていくのはとても大変だっただろう。
今日のために頑張ってくれたというのが嬉しい。
「素晴らしい作品だ。ありがとう!」
「ありがとうございます!」
お礼を言って、共鳴で言葉だけじゃ足りない感謝を伝える。
さっきの織り物と同じだ。
手間暇に込められた気持ちがとても嬉しい。
ほんとはもっと時間をかけて見たいんだけど、先を急がないといけない。残念。
この先には何があるんだろう。
勝手に期待するのはいけないけど、北は歓迎の仕方が他の地区より力が入ってる。
クルビスさんの本拠地だからだろう。
愛されてるなあ。
隊長さんだから、トカゲの次代だからってだけじゃないのも街の皆さんの笑顔を見てるとよくわかる。
そのひとの奥さんになるんだなあ。しっかり支えて、良き伴侶だと思われるように頑張らなきゃ。




