51
しばらく噴水を楽しんだ後、また同じ道を通っていく。
今度は曲がり角はなくて、真っ直ぐな道だ。
道の端に高く設置された板に色とりどりの輪っかが並んだお店が見えてくる。
小さな輪っかだけど、何に使うんだろう。輪投げじゃあないよね?
「ハルカ様、あそこに髪ゴムが。長がこちらの工房街に頼んで開発したのです。今は見えませんが、うちの一族のものです。」
髪ゴム?メルバさんが頼んだって…ああ!
私の髪ゴムを見せて、同じようなのが作れないかって提案したんだっけ。
メルバさんの発明ってことになってるけど、元ネタは私だ。
まだクルビスさんと婚約してなかったから、技術目当てのひと達が殺到しないようにってメルバさんが仲介してくれたんだよね。
結構売れてるらしくて、発明者への報酬は全部私の貯金になっている。
何かあった時のためにとっておきなさいって、ありがたい言葉と共にメルバさんが全部やってくれた。
エルフの技術者さんが作ったんだ。メルバさんの頼みが通るはずだよ。
あれが、何で今日売られてるんだろう?
「七色の石のビーズを着けてアクセサリーにしてるみたいですよ。」
「ああ、ハルカの衣装に合わせたらしいな。申請が来てた。最初は石のアクセサリ―だったろ?それにちなんで作ったらしい。」
ああ。話題のひとと同じもの、似たものをってやつ。
でも、結局真珠になっちゃったんだよね。
「じゃあ、海の輝石になってしまって、困ってるんじゃ。」
「大丈夫だと思います。お姉さんの命を守った石ってことで、今七色の石が流行ってますから。」
思わぬところで迷惑がかかったと思ったら、ルシン君が後ろから新たな情報をくれた。
七色の石?身を守った?
ええっ。何それ。
それって、私が狙われたことが流れてるの?
そんな、クレイさんがやったことも?
グレゴリーさんやオルファさんに迷惑がかかっちゃう。
「大まかに情報を流しただけだ。アクセサリーが変わった理由が必要だったからな。母が「狙われたが、七色の石が身を守った。」という話にして流したらしい。」
驚く私にクルビスさんが耳打ちして本当のことを教えてくれる。
「七色の石が身を守った。」って、何だか物語ちっくな情報だ。
でも、確かにアクセサリーを作った技術者さんにはすでに話が通っていたし、その周囲では知られていただろう。
それをいきなり変えたら怪しまれるよね。理由は必要だ。
最初の風の道のことといい、メラさんには後できちんとお礼を言いにいかないと。
手土産は水ようかんでいいかな?




