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そのまま星街を回ってまた噴水に戻る。
戻って気づいたのは、星街にはちゃんと街灯があったこと。とても街灯らしいものだった。
今までは建物の玄関先に明かりを置く場所があっても、日本の街中にあるみたいな背の高い街灯は見たことなかった。
まあ、夜に出歩いたことなかったから、知らなかっただけかもしれないけど。
星街の街灯は、丸い球が鳥かごみたいなのに入って、石でできた土台からぶら下げるようなデザインだった。
結構背が高いもので、一階だけの小さいテンポの屋根くらいまであった。3m以上はあると思う。
まだ明るかったけど、色とりどりの輝きを放っていて、とても華やかな雰囲気になっていた。
クルビスさんの情報によると、星街は特別な色のついた陽球を街灯に使っていて、花のように色とりどりなことから「花陽球」と言われているらしい。
でも、星街の通りから噴水に戻る時にようやく気付いたくらいだから、街灯はあまり見れなかった。
おしかったなあ。夜に来た時にはちゃんと見ないと。
「夜の楽しみでいいだろう?明るいうちはあまりわからないんだ。」
どうやらクルビスさんは夜に見に来るからって、街灯のことをわざわざ言わなかったみたいだ。
光の道と一緒に夜に来るときの楽しみになるだろう。
「はい。」
見上げながら返事をすると、チュッとまたデコちゅうされる。
だから、いきなりしないの。お化粧崩れるでしょう?
「そんなにしてないだろう?」
「塗ってますよ。いろいろ。ああ、もう口についちゃった。」
私が指先でこすり取ると、周りから歓声が。
え。私たち?…じゃないか。噴水だ。
今度は支柱の真ん中あたりとてっぺんから放射状に水が出ていて、まるでスカートを膨らませた貴婦人のドレスのようだった。
水の出る所が回転するのか、ドレスがふわりと一回転するような動きでまるでダンスを踊っているようだ。
「わあ。また違う形。」
「この形は『レディ』だな。長の開発されたものだ。」
メルバさんかあ。さすがにこれは、あー兄ちゃんが元ネタじゃあないだろう。
じゃあ、エルフのいた世界はドレスが当たり前の世界だったってことかな?
話を聞いてる限りあー兄ちゃんのトリップは王道みたいだったし、中世ぐらいの文化だったら貴婦人はドレスだろう。
なら、呼び名がレディなのも納得だ。
「可愛いですね。」
「ああ。ジテに似ているしな。」
「ジテ?」
何だろう?私の知らない単語だ。
意味が伝わらないってことは何かの名前ってことだろうけど、あのドレスの形に似てる生き物がいるの?
「そうだ。海にいる生き物で海中をふわりと浮くように移動する。ちょうどあんな風に。」
海の中をふわふわ浮いて移動する。それってクラゲ?
異世界にもクラゲっているんだ。へえ。
「こちらにもいるんですね。故郷ではクラゲと呼んでいました。」
「クラゲ?似たような生き物がいるんだな。」
クルビスさんも驚いている。
私も驚いた。まさか異世界でクラゲの話を聞くことになるなんて。




