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 周りが落ち着いたのを見計らって、私たちは先に進むことにした。

 ビドーさんがいるなら大丈夫だろう。頼りになる感じだったし。



「いらしたぞ!」



「おめでとうございます!」



 守備隊の前からメイン通りのマレリー通り、ミレリー通りを通って買い物をした広場に出る。

 いつもは市場が立つこの場所は今日は噴水が出ていて、その中に花が浮かべられ、周りにも花がたくさん飾られていた。



 今は木の枝みたいな形の支柱のてっぺんから四方に細い水の帯が噴き出て、下からは盛り上がった水柱が何本も生えたり消えたりしている。

 あ、収まった。ただの噴水に戻ったと思ったら、今度は八方に霧状の水の帯が降り注ぐ。



 霧に光が反射して水の粒が虹のような色とりどりに光る。

 周りからもわっと歓声が上がった。



「お~。こりゃすげえ。」



「綺麗ですねえ。」



「ああ。見事だな。」



 シードさんが噴水を指さして驚くと、それを見た私とクルビスさんも見とれてしまう。

 立ち止まった私たちに後ろから覗き込んだルシン君とアニスさんも見とれていた。



「これが噴水…。綺麗です。」



「今日はいつもより華やかだわ。でも、本当に。綺麗ね。」



 ルシン君も初めて見たらしく、興奮している。

 楽しいもんねえ。ここの噴水は仕掛けが豪華だから、見ていて本当に飽きない作りだ。



 この噴水は街の名所の一つだけど、普段は地下に収納されていてその上に市場が立ったり、イベントが行われたりする。



 噴水が地上に出る日は決まっていて、それを見ようと観光客が詰めかけるから身動きとるのも大変だ。

 だから、ルシェモモ育ちでも見たことがないってひとも結構いるって話だ。



 私も初めて街に買い物に出た日が噴水の日と重なって、すごい人混みだった。

 それを避けるために噴水のショーが終わるまでお店に避難してたんだよね。だから結局噴水は見なかった。



 今日見れてラッキーだったな。

 お祭りだから特別なんだろうか。



「おめでとうございます!」



「トカゲの家長さまからのお祝いだそうです!」



 近くにいたトカゲの一族の男性が教えてくれる。

 思わずクルビスさんと顔を見合わせた。



 え。この噴水。アルフレッドさんのご厚意なの?

 噴水の日と時間が決まってるのも、かなりお金がかかるかららしいのに、それを出して下さったんだろうか。



「クルビスさん知ってました?」



「…いや。何か北の祝いらしいことをしたがってるとルドが言ってたが…。」



 北のシンボルといえば、この噴水だ。

 だから、アルフレッドさんはこの噴水を出してくれたのかな?



 きっと許可とか手続きとか大変だっただろうなあ。

 後でお礼に伺わないと。ねえ?クルビスさん。



「ああ。そうだな。」



 そう言って、クルビスさんはまたデコチューをした。

 ちょっ。またっ。



「おおー!」



「いいねえ。若いってのはっ。」



 そういって、皆が口ぐちに私たちをはやし立てる。

 結局、そのまま私の文句は周り歓声にかき消されて有耶無耶にされてしまった。

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