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 一歩出ると、中央の時みたいに割れんばかりの歓声で出迎えられた。

 うう。耳栓してるのに。ジンジンする。



「これはすごいな。ハルカ聞こえるか?」



 クルビスさんの声かけにも頷くのが精一杯だ。

 道は極細の紐のようなもので遮られていて、間隔を開けて隊士さんが紐を持って立っている。



 これなら、道が途中でなくなることもないだろう。

 引きつる頬を何とか笑顔の形にして、クルビスさんと手を振りながら歩いて行く。



「おめでとうございます!クルビス隊長!」



「おめでとうございます!ハルカ様!」



「クルビス様、良かった!ううっ。」



 これまでだって、歓声揚げたり乾杯するひとはいたけど、ここでは顔を伏せて泣いてしまってるひともいる。

 何だか、今までの地区とは雰囲気が違うなあ。



 感極まったって感じのひとがよく目につく。

 クルビスさんの本拠地だからだろうか。



「あっちで泣いてるのは隊士になりたての頃、よく食事をおごってくれた食堂のおかみさん。あそこは磨き屋の亭主。いつも世話になっている。」



 不思議そうに泣いてるひとを見ていた私にクルビスさんが理由を耳打ちしてくれる。

 そっか。街じゅうに知られているクルビスさんだけど、北では日頃から親しくしているひとが多いから。



 それで、あちこちで感極まって泣いてしまうひとがいるんだ。

 それにしても、磨き屋って何だろう?お風呂屋さんとか?



「おめでとうございます!隊長!」



「お幸せに!」



 別のことに考えがいきそうになっていると、道の整備のために要所要所に立っている隊士さん達が次々と声をかけてくれる。

 こんなのも初めてだ。皆とても良い笑顔をしている。



「ありがとう。」



 クルビスさんも目を細めて満面の笑みで答えている。

 すごく嬉しいって魔素でも伝わってくる。



 私もニコリと微笑んで手を振っておいた。

 大丈夫、あなた達の隊長さんは私が幸せにするから。安心してね。



 すると、黒い腕が伸びて来て、私をぎゅううと抱きしめた。

 え。何でクルビスさんに抱きしめられてんの?え?え?



「…あまり煽らないでくれ。」



 ふえっ。…腰抜けた。

 クルビスさんの腕が巻き付いてるおかげで座り込まずに済んでるけど、しばらく歩けそうにない。



 ちょっとっ。クルビスさんっ。

 何やってくれてんですかっ。まだまだ歩かないといけないのにっ。



「ハルカが悪い。」



 はあ?何わけわかんないこと…。

 クルビスさんを問いただそうとした時、周りからドッと笑いが起こった。



「こりゃあ尻尾に敷かれるな。」



「うらやましいぜっ。クルビス様っ。」



「いいわねえ。新婚って感じっ。」



 え。あ。しまった。共鳴してる。

 どうして今日はこう。魔素を抑えてないからかな?



 ちらりと見上げると、にやりと笑うクルビスさんと目が合う。

 もしや、確信犯ですか。



 さっき歩くっていった時、不満そうに見えたのは気のせいじゃなかったみたい。

 そんなに嫌なら言えばいいでしょうが。ホントに困った旦那様だ。

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