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 型につめて冷やすこと30分程。その間に餡子を作り、ひと口サイズに丸めておく。

 私のひと口ですよ?トカゲな方々のひと口じゃありません。



 ゼリーが固まったのを確認して、重ねてた型を外すと…おおっ、半透明なドーム型の膜が出来上がっている!

 冷やす前のゼリーは思った以上にドロドロしてたので、同じ型を重ねてその間に流し込んだら包みやすい形にならないかと試したら、理想の仕上がりになった。



「上手くいきましたねっ。」



「ああ。こんな風に固められるものなんだな。ハルカの発想には驚かされる。」



 結果に満足しながら丁寧にドーム型の膜をはがしていき、試しに作った2つの膜の分だけ餡子を包み込む。

 そうして、内側から外側に向かって濃淡のあるピンクと紫の葛餅が出来上がった。



 薄い水の膜で覆われているようで、見た目にもとても涼やかだ。

 ピンクと紫もパステルカラーな感じになってとても可愛らしい葛餅になったと思う。



「成る程。水を固めたようで、見た目にも涼しい感じだ。」



「ええ。可愛く出来ましたし、理想通りです!早速食べてみましょう。」



 ルドさんに半分にしてもらって、ピンクと紫の葛餅を1つずつ口に放りこむ。

 うん。冷たくて美味しい。ホントに葛餅みたいだなあ。



 他の種族にもウケそうだな。

 ルドさんも驚いた顔をしてるけど、すぐに次の1切れを口に放りこんだし。



 ゼリーには味付けしてないけど、ひんやりした食感が良い感じだし、餡子の甘みだけでも十分かも。

 でも、餡子の甘みをもっと抑えるなら、ゼリーの方にもちょっとだけ甘みをつけるのもありかなあ?



「包んでから冷やしてもいいですよね。」



「そうだな。アンコは魔素が逃げにくいし、有りかもな。」




 アレコレ思い付いたことを検討しつつ、冷やした葛餅がいいと伝えると、ルドさんの同意が帰ってきた。

 やった。これで冷やしたスイーツの認知が広まってくれればいいな。最終目標はフルーツシャーベットを広めることだ。



 こっちでは生きていくのに重要な『魔素』というエネルギーを食事で補う。

 魔素は時間が経つほど失われていくから、食材も調理も時間との勝負なところがあって、冷やして置いておく料理は少ない。



 だけど、砂糖や塩の魔素は例外らしい。

 精製する時点ですでにある程度魔素を失った後だからか、精製の過程で魔素がとどめ置かれる処置がされるからかわからないけど、実際、魔素が減らないので砂糖なんかは薬扱いされたりもする。



 そして何でか、その魔素の逃げにくい砂糖をたくさん使って作る餡子は、朝作ったら夕方までほとんど魔素が減らずにすむらしく、とても便利なスイーツだと認識されている。



 そのため、作り置きが効くのが良かったらしく、餡子をトッピングしたかき氷は北の守備隊の名物としてメニューに正式に乗るようになった。

 まさか異世界で名物作るはめになるとは思わなかったなあ。喜んでもらえてるからいいけど。



 この分だと葛餅も入れてくれそうかな?

 これだけの手間がかかると、ちょっと素人が気軽に作れるものじゃないし、是非、メニューに載せていただきたい。

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