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 ダンサーさん達が下がった後、布で仕切られた道をゆっくりとクルビスさんと歩いて行く。

 南地区は染物の地区だから、道も布で仕切られているようだ。



 南は布の流通に関するお店や工房がほとんど揃っていて、その数が一番多い。

 染物の原料は港からの仕入れだけど、原料の花や草から染粉を作る工房から染物の工房、それらを売る生地屋さんにその布から服を作るお針子さんの工房まであるくらいだ。



 他に、染め用の真白い布を作る工房に、衣装に合わせる貝殻や石の細工のお店が多いのも南地区の特徴だ。

「音の南」と言われるのと同じくらい、「染めの南」と言われるのだとか。



 道を作っている仕切り布も染めが赤からピンク、ピーチになったらオレンジ系になってと、少しずつグラデーションしてて、どこかでつなげてあるはずなのに切れ目がまったくわからない。

 それとも、一本の長い反物なんだろうか?さすが技術都市。



「あの黒!素晴らしい染めだねえ!」



「ホント、何度染めたのかしら?」



「きっと10回は染めてるよ。だから、光が反射しても、ほら、黒いだろう?」



 おっと。ここではドレスの方に注目が集まったか。

 黒の生地はリッカさんのプレゼントだけど、赤の一族が南に住んでることを考えると、この生地も南で染められたものだろう。



 黒は染めるのが難しいらしく、染めた回数が多ければ多いほど高価で黒い布になる。

 だから、光を反射しても真っ黒なこのドレスはとても目立っていた。



「はああ。いい色だねえ。日よけが白だと黒が余計目立つね。」



「海の輝石が白なのもいいよな。やっぱり白でなきゃ。」



「ああ。白が一番いい色なんだっけ?」



「おうさ。海の色を映してるからな。」



 あ。白の真珠の価値を知ってるひと達がいた。

 ちらりと見ると、ひとりはトカゲの一族で、もうひとりはトカゲの一族より一回り小さい体格で、腕に小さなひれみたいなものが付いている。



 鱗はあるみたいだけど、爬虫類って感じはしない。

 もしかして、あれが魚人?えーと、こっちの発音では「シーマーム」だっけ。



 海の民って意味だと教わったけど、種族を代表する長がいるのは海底都市で、今は潮の流れが悪くて挨拶に行けてないから、お話ししたことはない。

 南ではいくつかの魚人は街で商売をしているそうだから、今の彼がきっとそうだろう。



 ここでは黒を見るひとと白を見るひとに分かれそうだな。

 願わくば、黒を見るひと達が白も見てくれますように。

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