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東地区を見て回ると「白ばかりね。」とか、「花も白だけなの。」とかいう声があちこちから聞こえた。
中には「せっかくの黒に白を合わせるなんて。」といった差別的な意見もあった。
まあ、それも仕方ないことなのかもしれない。
祝いに来てくれてるひと達の衣装は、どれも色鮮やかなものばかりだ。
濃い体色のひとが真っ白な服を着たらとても綺麗だと思うんだけど、どんな体色のひとも、原色に近い鮮やかな色の服は着ていても、白もしくは淡い色の服のひとはほとんどいない。
この街で白の価値はかなり低いというのが目に見える光景だ。
彼らにこのドレスはどう見えているんだろう。
「ねえねえ。あれってもしかして海の輝石?」
あ。まただ。
私の花冠が白い花だけなのと同じくらい、白い真珠のアクセサリーにも視線が向けられている。
「綺麗ねえ。白もああして見ると素敵だわ。」
え?今、白を褒めた?
聞こえた方を見ると、きれいな水色から青のグラデーションの体色を持つ女性がこちらを見て微笑んでいた。
彼女の服は白地にカラフルな染めの入ったココの布だった。
ココの布は染めの色が増える程に、地色は薄くなって布地の値段も高くなるって聞いてるけど、彼女の着ている布はかなりの色数なのが見て取れる。
周りにいる女性たちも細かく染めや刺繍の入った高価な布を着ている。
その集団は周りとは少し違ってたけど、派手というより、彼女たちはオシャレなだけだろう。
そういうひと達が認めてくれると、白の価値も少しは良くなるかもしれない。
オシャレなひと達に褒められて純粋に嬉しいのもあって、私は彼女たちにニコリと微笑んでおいた。
そしたら何故か目を軽く見開いて驚かれたけど。
なんでだろう?
「ハルカが彼女たちを見て可愛いと思ったからだ。俺にも魔素で伝わったぞ?」
彼女たちが驚いた理由をクルビスさんが教えてくれる。
え?だって、オシャレだし、けばけばしい感じもしないし、綺麗なお姉さん達じゃないですか。
「だって、綺麗なお姉さん達ですよ?愛想よくしたくなりません?」
「…ハルカらしいな。」
素直に言ったら、クルビスさんに苦笑されてしまった。
え。え。何で?だって、皆、綺麗なお姉さんは好きですよ。
トカゲやヘビの美醜はまだよくわかってはいなけど、彼女たちがとても身なりに気を使ってるのはわかる。
鱗はぴかぴかしてるし、体色と着ている服の色の組み合わせも良く似合ってるものばかりだ。
アクセサリーは花を編んだブレスレットにネックレスだけど、小ぶりなものを使っているから衣装の邪魔にはなっていない。
顔だって、ごつい感じのひとはいないし、皆、小顔で整った顔立ちをしてると思う。
つまり、彼女たちはこの世界での綺麗なお姉さんにあたると思う。
だから、白を褒めてもらえたのが余計に嬉しかったんだけど、クルビスさんは笑うばかりだ。
もう。後で絶対に聞き出してやる。
気になるじゃないですか。




