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「ようこそ。東地区へ。本日はおめでとうございます。わたくし、この地区で戦士部隊隊長を務めております、フォーレンガのギャリガと申します。」
東地区へ飛んで最初に出迎えてくれたのは、大きな赤い複眼にアンテナのようなブロンズ色の触覚と、大きな派手な模様の入った羽を持つ蛾のような隊士さんだった。
前に南地区で案内してくれたのもフォーレンガの隊士さんだった。
メタリックな肌に宝石のような複眼、それがまた仮面…ゲフンッゲフンッ。
え~。某ライダー様のようで、私にとっては親近感がわく種族だ。
ギャリガさんに案内された控室は、入口が今までお邪魔したどの守備隊より大きかった。
きっと、ギャリガさんのように羽のある種族のひとが勤務してるからだろう。
ドラゴンのように背中にしまえればいいけど、フォーレンガは私の知ってる昆虫のように羽は出しっぱなしだ。
たしか、フォーレンガの隊士さんが配属される地域は高低差の大きい土地のはずだ。
前にルシェリードさんにルシェモモの上空を一周してもらった時、東は半分崖になってて、そこが段々畑みたいに花で埋め尽くされていた。
あんなところを見まわるなら、飛べる種族の隊士さんが必要だろう。
ここにはドラゴンの一族の隊士さんも2つ以上は常に勤務してるっていうし。
街の花の5割は東地区で栽培しているらしい。
だから、「花」と言えば「東」なんて言われるほどだそうだ。
5割と言っても、髪飾りにするような一般的な花はすべて東地区でまかなってるそうだ。
だから、今日の式で街じゅうに手配されている花も東地区のものだ。
案内してもらった部屋にも窓辺やドア、机の上も花であふれている。
南国って感じの極彩色のものばかりだ。
「わあ。綺麗。」
「さすがは東地区ですね。花の使い方が素晴らしい。」
「ありがとうございます。こちらでは花を大きな縄にあしらって道にしております。中央のようなことにはならないと思いますよ。」
縄に花を…。
ロープとかはしないと思ってたのに、意外。
「それで、規制になりますか?後ろの方にはわからないのでは?」
クルビスさんも同じことを思ったらしく、興味深そうに聞いていた。
「花の香りで縄の見えない後ろの者たちにも、境界線がどこか知らせます。だから、香りの強い花を使いますね。」
「そりゃいいですね。それなら、道になだれ込んでくる住民もいない。」
「大きな行事に良いですね。道の隊士の数が減らせる。」
「ええ。うちは地形のおかげで適任の隊士が少ないですから。何か効率のいい方法はないかと知恵をしぼりました。」
空を飛べる隊士さんや跳躍の得意な隊士さんじゃないと、あの崖は無理だろうなあ。
でも、おかげで花のロープで飾られた道を歩けるんだ。きっと綺麗だろうな。




