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「おお!いらしたぞ!」
「おい!クルビス様とハルカ様がいらしたぞ!寝てるやつ起こせ!」
「クルビス様とハルカ様が到着されたってーっ。」
「クルビス様がーっ。」
私たちが外に出ると、道の脇にいたひと達が口ぐちに知らせて回る。
何だか伝言ゲームみたいだ。後ろの方って正確に伝わってるのかな?
「あの首飾りキラキラしてる。きれいねえ。」
「ねえ。ぼく、喉かわいた。おかーさーん。」
ルシン君の提案で道のすぐそばには子供たちがいる。
後ろにお母さんやお父さんがついてるみたいだけど、道の方を覗きこんでる子もいれば、座り込んでる子もいる。
それにしても、奥の方、居酒屋さんかな?飲み比べやってるよね?ヘビの一族かな?
前の方が子供たちだから、奥の建物の方にいる成人した個立ちのグループが良く見えるんだけど、ふたりが向かい合ってジョッキを次々と煽っている。
「っし。次っ。持って来いっ。」
「何やってんだよ。親父さん。クルビス様到着されたってよ。後だ後。」
あ。お酒の樽が持って行かれてる。
ブーイングも聞こえるけど、あそこにいる大半は笑ってるようだ。
「おしっ。次はどっちがクルビス様とハルカ様に先にご挨拶できるか勝負だ!」
「望むところだ!」
かと思えば、何だかわけのわからないにらみ合いをしてるひと達もいた。
勝負?え?何の?
「なるほど、大騒ぎだな。」
クルビスさんも外の喧噪に驚いている。
道にいた隊士さんやヘビの一族のひと達が、総出で大騒ぎしてるひと達に声をかけるんだけど、それも騒ぐネタになってるみたいだ。
「さあさあ、皆、今日の主役が到着されたぞ!つぶれる前に祝いの言葉を贈ろうではないか!」
見かねたザドさんが大きく声を張り上げる。
ザドさんの声は特別低いわけではないんだけど、代わりによく通る。
少し離れた場所にいても私にもザドさんの声は耳に入るくらいだ。
声に魔素が滲み出てるっていうのかな?話す時にも魔素は消費するんだけど、ザドさんの場合、それがもっと多い気がする。
「おお!そうだ!祝おう!」
「祝おう!」
「おめでとうございます!」
「おめでとうございます!世界の導きがありますように!」
実際、ザドさんの声かけで、それまでの喧噪はなりを潜め、みんな道の傍に集まって口ぐちに祝いの言葉を叫びながら杯を掲げたりしている。
お酒は離さないんですね。大半はヘビの一族かな。頭が丸いし。
子供たちはびっくりして目をまん丸く見開いた子もいたけど、私たちをみると、目を輝かせて手を振ってくれる。
「ルシンーっ。」とか言う声も聞こえたから、ルシン君のお友達も来てるのかもしれない。
西の歓迎ってすごくにぎやかだ。
西に一番多いヘビの一族のカラーが強烈に出ている。
お祭り好きで、酒好きで、美味しいものも、にぎやかなのも大好き。
皆すごく楽しんでる感じで、祝ってもらってるこっちも楽しくなってくる。
ただ、とてもいい匂いがそこらじゅうから漂ってきているのには笑ってしまった。
ヘビの一族はたくさん食べるから、道の半分は屋台で埋まっているようだ。
屋台のひと達も手を振って「おめでとうございます!」と言ってくれている。
隊士さんとヘビの一族の若者のおかげで道もちゃんと通れる幅だし、これなら西地区は笑ってゆったり回れそうだ。




