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14

 それからザドさんがどこかに連絡したかと思うと、しばらく転移室の横の部屋で待つように言われた。

 地区から地区への移動にはその地区の守備隊本部に転移するので、私たちの休憩室もきちんと確保されている。



 部屋行くと、隊士さんが「飲み物や軽食はいかがですか?」と聞いてくれたので、私とアニスさんは冷たい飲み物を、クルビスさんたち男性陣は軽食も頼んでいた。

 中央から転移してきたのが予定より早かったらしく、ザドさんはその調整に出てくれたようだ。



 カッカッ



 ノックに答えると、入って来たのはルシン君のお兄さんのアルスさんだった。

 両手には山盛りの料理が乗っている。…軽食だよね?



「本日はおめでとうございます。住人への通達にもうしばらく時間がかかりますので、ゆっくりなさって下さい。それと、よろしければ、こちらの布をお使い下さい。お召し物が汚れてしまいますので。」



 そういって、アルスさんは両手一杯の料理をテーブルの上に並べると、脇に抱えていた布を差し出した。

 さすがルシン君のお兄さん。周りへの気遣いが細やかだ。



「ありがとうございます。ハルカ、貸してもらおう。」



「はい。ありがとうございます。アルスさん。助かります。」



「助かるぜ。式服は替えがねえからな。」



「ホントに。ありがとうございます。」



 私たちのお礼にもアルスさんは「当然の用意ですので。」と何でもない風に笑顔で答えてくれる。

 カッコいいなあ。「お気遣いの紳士」はここにもいたんだ。



「あ。こら、ルシンっ。ちゃんと布をかけてから食べなさい。」



「う。…はあい。」



 いや、保護者が子供のついでに私たちの分の布も用意したって方が近いかな?

 ルシン君の世話を焼いてるアルスさんを見てるとそうも思える。



 年が離れてるもんねえ。

 確か、アルスさんは230歳で、ルシン君は54歳だったと想うから、年の差…176歳!



 うん。もう親子って言ってもいいかも。

 周りも仲のいい兄弟をにこやかに見守っている。



「さあ。では、我々も頂こうか。」



 クルビスさんに声をかけられて、各々、自分の前に置かれた飲み物や食べ物に手を付け始める。

 飲み物はフルーツジュースで、男性陣の前には軽食の小龍包みたいなものが置かれていた。



 これで飲み物がウーロン茶だったら飲茶だ。

 でも、小皿が余分に2つある。もしかして、これ。



「よろしければ、ハルカ様もアニス隊士も少しどうぞ。時間はありますし、この後食べられるかわかりませんから。」



 穏やかにアルスさんが小龍包もどきを勧めてくれる。

 そうだよねえ。あの騒ぎじゃあ、途中で予定してる街での食事は無理そうだ。



 今日はどこもお祭り騒ぎで、どこでもお酒と食べ物が売っているから、隊士さんにも特別用意されることはないのだそうだ。

 つまり、守備隊の食堂で勤務している調理師さんにはお休みしてもらえるってことで、北の守備隊にいるときならともかく、私とクルビスさんの食事は現地調達になっていた。



 それが無理そうなのは、さっきの騒ぎでよくわかった。

 時間があるなら、食べた後でメイク直せるだろうし、ちょっといただこうかな。


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