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右、左、一歩前、右、左、一歩前…。
間違えないように、でも、クルビスさんに遅れないように、歩みを進めていく。
入口の横に並んでいたドラゴン達は今は端の方に移動して、メイン会場の中央の様子はよくわかるようになっているはずだから、私とクルビスさんの歩みは丸見えだ。
緊張するけど、深呼吸して魔素を整える。今は歩くことだけに集中しなきゃ。
もうすぐ長たちの目の前だ。
各長が並ぶ中、一歩前にルシェリードさんが出て待っている。
皆さんお会いしたことのある方ばかりだけど、これだけ揃うとドラゴン達とはまた違った迫力がある。
どうにも頭を下げたくなるというか、かなわないと思わせるもの。そう、威厳だ。
中でもルシェリードさんの威厳は別格。
黄金色に光輝く鱗と相まって、まるで神様みたいだ。
神様の前で結婚の誓いなんて、まるで地球の結婚式だ。
そんなことを感じながら、ルシェリードさんから尻尾2つ分、4mくらい手前で止まる。
ここで、クルビスさんの手を離し、胸に手をあて礼をする。
そして、ルシェリードさんが祝福の言葉を贈ってくれた。
「街の北の守護をつかさどる戦士よ。その伴侶よ。そなたらの縁がこの街の発展と一族の繁栄の礎になることを願う。世界の祝福を!」
その言葉とともに、何ともいえない気持ちのいいものに包まれる。
これ、世界に宣誓したときに似てる。とても厳かで、清らかな空気が辺りを支配している。
ああ。今、世界に私とクルビスさんの結婚が認められてるんだな。
自分で決めたことだし宣誓もしたけれど、何だかこれで本当にクルビスさんと一緒に認められた気がする。
難しい言葉とかじゃないけれど、とても力のある言葉で祝福してもらった。
形だけのものじゃない、本当の祝福だ。
クルビスさんと一緒に深く礼をすると、大きな拍手と歓声に包まれる。
簡単だけど、これで式の一番大事な所は終わった。
後は、街中を祝福されながら歩いていくだけだ。
これが一番大変なんだけどね。
でも、お祝いしてもらえるんだから。
頑張って歩かなきゃ。
そんなことを考えながら顔を上げると、視界がぐるりと反転した。
え。え。何?
「睦まじいことよ。良き番だ。」
ルシェリードさんのセリフが横から聞こえる。
あれ?私、今抱っこされてる?何で?




