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「…良かった。急いで持ち出しましたが、問題ありません。」



 ドレスの確認をし終わったマルシェさんが、ドレスに問題がないことを教えてくれる。

 良かった。マルシェさんがドレスを運んだのだから、おかしなことにはなってないと思ったけど、確認してもらえたら安心だ。



「良かった。」



「ええ。本当に。」



 リリィさんとアニスさんもホッとした顔だ。

 メラさんもにこやかに頷いている。



「では、この状態で式の儀礼をおさらいしておきましょう。今までも布は巻いてましたが、一度はドレスで練習しないと。」



「はい。」



 そうだ。明日の式は、動きは派手じゃないけど、決められた手順で動作を行わないといけないから結構大変なんだよね。

 ゆっくりした動作ばかりだけど、動きやすいドレスってわけでもないから、確認はしておきたい。



「では、入場が終わった所から。入場と退場の練習は後で会議室が空いたら移動して行いましょう。」



 リリィさんの声かけに、ここしばらくみっちり練習した動作を思い出す。

 確か、入場した後は、各長の前に立ってルシェモモの街に名乗り、帰属する近いを述べる。



 その際、私はベールを脱ぎ、黒の単色であることを皆に知らしめないといけない。

 お披露目で見てもらってるけど、招待されるのは一握りのひと達だけなので、守備隊にある映像を映す装置を使って街じゅうでその姿を流してもらうことになってる。



 誓いを述べると、ルシェリードさんが長たちを代表して街をあげて新しい番を歓迎する祝辞を述べてくれる。

 ただ、私たちは名乗ってから祝辞が終わるまで礼の姿勢で状態を傾けたまま動けない。



 これはマーメイドドレスだときついかもしれない。

 次に、祝辞が終わると顔を上げて、今度はクルビスさんと向かい合う。



 ここからはトカゲの一族の婚姻の儀式の部分で、クルビスさんは腰に刺した短めのトカゲの一族の儀礼用の剣を私のまわりでひとふりする。

 私は剣を鞘に戻したクルビスさんの腕を下から持ち上げるようにして、支えながら寄り添う。



 これは、トカゲの一族がまだ森の中で家族単位で暮らしていたころの名残で、狭い空間でも使いやすい短めの剣で伴侶とこれから生まれてくる子を守ることを示し、腕を支えることで共に歩んでいくことを示す。



 この間は一切の無言。

 衣擦れの音も極力立ててはいけない。



 森の中では様々な危険動物がいるため、大きな音を立てると動物たちの気を引いてしまうので、式などで親戚が大勢集まる時などは、極力静かにしなくてはいけなかったからだそうだ。



 …これが一番大変かも。

 私のドレスは裾が長いから、どうしても衣擦れの音が立ちやすい。



 長い真珠のネックレスも音がしそうだし、ゆっくり静かに動かないと。

 ううう。これ皆に見られるんだよねえ。緊張するなあ。


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